後日調べてわかったことだがこの物件では、彼女が購入する前からしばしばトラブルがあったようだ。以前は貸家だったが借り主の態度が好ましくなく、家主に無断でAirbnbに登録して転貸することがあったという。
英紙「Airbnbが村を台無しにした」
この住人はすでに退去したが、Airbnb上でリスティング登録を削除しなかったため、依然として新規ゲストの予約を受け入れる状態となっていた。チェックインに訪れた男性としては何の悪意もなく、予約したはずの宿を訪れただけだったというわけだ。
だが、女性にとっては身の危険すら感じかねない、寝耳に水の出来事だ。かなり特殊な例ではあるが、一般の住宅やその一部の部屋を他人に貸し出すビジネスならではの厄介事となった。
トラブルは後を絶たない。英テレグラフ紙は11月、「Airbnbが村を台無しに」との記事を掲載している。記事で問題となっているのは、イギリス南西部はコーンウォールに位置するブラウントンという魅力的な田舎町だ。
人口7000人ほどの小さな町であり、「イングランド最大の村」としても知られる。愛らしい町並みを楽しみビーチで憩いのひとときを過ごそうと、町を訪れる観光客も決して少なくはない。
のどかだった町だが、Airbnbが急速に浸透したことで異変を来した。記事によると周辺地域では、1600ポンド(約27万円)を稼げる見込みとなっている。少なくともAirbnbが提供する収益予測ツールでは、そのように表示されるという。
4軒に1軒が貸し出されている地域も…
田舎町の貴重な収益源とあって、ホストに登録する家主が相次いだ。いまでは人口7000人(世帯数換算ではさらに少ない)ほどの同町において、1000件以上のリスティングが登録されている。イギリスのほかの地域に目を向ければ、たとえば北部スコットランドのセントアンドリューズでは、町の4軒に1軒がAirbnbの物件として貸し出されている。
レンタル用の物件が増えるにつれ、本来の住民が住処を探すことが難しくなっている。自閉症を抱えた6歳の息子と共に町に住むある女性は2021年の夏、それまで借りていた物件の大家側の都合により、退去を余儀なくされた。しかし、Airbnbのリスティングに占拠された町において、引っ越し先を探すのは絶望的だったようだ。
「彼(息子)を学校に送り届けた帰り道、私は泣き出してしまいました。自分が故郷だと思っていた場所で、住む場所がどこにも見つからない。それが胸を締め付けたのです」
旅先で手軽に宿を見つけられることは喜ばしいことだ。だが、訪れる先の地域によっては、その宿は根っからの住民が本来住みたかった家なのかもしれない。そのような現実を知ると、旅行者としても心情は複雑だ。