所属する部署がほぼなくなった

実際、リーマン・ショックで非情なリストラにあい、働く妻に救われた外資マンがいる。滝沢裕紀さん(仮名、41歳)だ。2年ほど前までは、妻と2人で世帯年収にして約4000万円を稼ぐ、超高収入DINKSカップルだった。

2人が金融危機の前兆に気づいたのはサブプライム問題が顕在化してきた2007年頃。妻が働いていた外資系金融も08年春頃に状況が危うくなり、「万が一倒産したら荷物も容易には運び出せなくなる」という危機感から休日に車で妻の荷物をあらかた運び出しにいったという。幸い妻の会社は持ち直したが、滝沢さんの会社は大胆な人員削減を断行。所属していた部署自体がほぼなくなったほどで、「結局、上司も部下もいなくなってしまった」。

滝沢さんは専業主夫となったが、家計を1人で支える妻の年収は2000万円超。「生活レベルはあまり落とさずにすんだ」と語る。車も家も売り払ってしまった同業者もいることを思えば恵まれているのは間違いない。

週1回雇っていたお手伝いさんもやめ、今は滝沢さんがすべての家事を担い、妻の弁当もつくる。妻とは同棲を経て入籍したばかり。無職になってからの結婚である。

「よく籍を入れてくれたと思います」と滝沢さんは語るが、妻は「職がないことが結婚しない理由にはならない」と言ってくれた。

1人暮らしの頃は後先を考えず、お金があればあるだけ使う生活。外車に1000万円かけたり、車で通勤し、駐車場代を毎日数千円払っていた。しかし、資産形成に熱心な今の妻と暮らすようになって、少しずつ貯蓄体質に変わっていった。「妻がモノを大切に使う姿に心打たれました。とにかく堅実で、将来に備えて投資し、ものすごいポートフォリオを形成している」。

再就職も「焦らず前職と同じくらいの収入のところを探したほうがいい」という妻の助言もあり、この2年ほど、主夫の傍ら、自宅でコンサルタントなどの仕事を受けつつ機会をうかがってきた。市況が回復してきた今、やっと就職活動を本格化させはじめた。

「弱肉強食の外資の場合、本当に欲しければ前職と同等以上の年収を提示します。無職だと買いたたかれがちな日本企業とは違うんです」