日本の酪農は牛にも残酷

牛に草ではなく穀物を食べさせるために、放牧ではなく舎飼いとなる。規模の小さい酪農家では、牛は「スタンチョン」という首輪やひもで一日中牛舎の狭い場所につながれている。体を固定されてエサを食べさせられているだけである。歩くことさえ許されない。こういう状態の自分を想像できるだろうか? 国際獣疫事務局(OIE)は、つなぎ飼いされている牛は福祉問題のリスクが高いので、十分に運動させるべきだとしているが、日本では放牧地や運動場に牛を放さない経営が多い。

規模の大きな農家では、ある程度のスペースでつながれずにまとめて飼育されるが、コンクリートの上を少し歩けるというだけである。また、コンクリートの上におがくずやもみなどの敷料を薄くまいただけの場所で寝ている。アスファルトの道路の上で、人が寝るようなものである。これが生涯続く。かなりの牛は足を痛め、跛行など歩行が困難となる。起立不能になる牛もいる。

牛も出産しないと乳を出さない。一般には、人工授精して妊娠・出産させる。栄養価に富んだ「初乳」を生まれたばかりの子牛に飲ませるだけで、すぐ子牛を母牛から引き離す。母牛からできる限り多くの生乳を絞るためである。これに対して、肉用牛の場合には、母子分離は早くて産後1カ月経ってからである。

この早すぎる母子分離は、母牛、子牛ともに大きなストレスになる。子牛は母牛の乳首を吸うことができないため、水を入れたバケツの取っ手をなめたり、一頭だけ入れられた狭い囲いの鉄柵をなめたりを繰り返す。引き離された子牛は輸入された安い脱脂粉乳を飲まされる。

酪農家は、子牛用の脱脂粉乳の輸入には反対しない。母牛が子牛を舌でなめるグルーミングを受けた子牛ほど発育が良い。しかし、生まれてすぐ子牛を母牛から引き離せばグルーミングはできない。これは、アニマルウェルフェアに反している。

写真=iStock.com/YaroslavKryuchka
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国土に立脚した放牧型酪農に転換せよ

本来酪農は土地に根差した産業だ。少数だが草地に放牧する酪農が日本にもある。アニマルウェルフェアの要請にもかなっている。草を食べる反芻動物の牛に狭い牛舎で穀物を食べさせることが良いのか? 出産後すぐに母牛から子牛を引き離すことはアニマルウェルフェアからも好ましくない。

海外の穀物に依存する酪農がいかに危ういものかは、今回よくわかったはずだ。政府が行うべきは、国土に立脚した放牧型酪農への転換である。

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