発達障害や精神疾患は全体の3分の1

きちんと調べたわけではないので断言はできませんが、私の印象では、ひきこもり全体の3分の1は障害や病気とはまったく関係のない人たち、もう3分の1は社交不安障害の人たち、残りの3分の1が社交不安障害以外の統合失調症やうつ病、発達障害などの精神疾患・精神障害を抱えた人たちとみています。

ASDの人は最後の3分の1のグループに含まれますが、さらにASDに限れば、その割合はもっと小さくなり、ひきこもり全体の1割にも満たないのではないかと考えられます。

ひとつめと2つめのグループの人たち、すなわち、社交不安障害を除いた精神障害が関わっていないタイプのひきこもりの人たちの大半は、「本当はひきこもりたくない」「できれば社会に出て活躍したい」と思っている人です。不都合な状況や環境により、あるいは不安が強いために外に行きたくても行けず、他人と関わりたくても関われず、否応なくひきこもっているのだと思います。

「社会に出れない気の毒な人」一律の支援に意味はない

加藤進昌『ここは、日本でいちばん患者が訪れる 大人の発達障害診療科』(プレジデント社)

しかし、ASDの人の場合、人と関わりたいと思っていないし、社会に出て活躍し、いろんな人たちから認められたいとも考えていません。部屋にこもって、自分の趣味や関心事に、誰にもじゃまされずに没頭していられることが幸せなのです。

一見すると、どちらも同じ「ひきこもり」ととらえられますが、本人の意図に反してしかたなく家にこもっている人と、自ら望んで家のなかにいる人では、事情は大きく異なります。

ところが、そうした背景をよく知らない多くの人は、どちらも“家に閉じこもって社会に出られない気の毒な人たち”という見方をしてしまいがちです。ひきこもっている背景に何があるのかを個別によく見極め、全員を同じように扱って一律の支援をしてしまわないことが重要です。

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