なぜ日本の福祉施設は薄暗くてダサいのか
「どうやら自分は企業に雇われて働くのは向いていないのかな……」。そんな思いを抱いていた時、GAKUさんを預けるために見学した福祉施設を訪れ、衝撃を受けた。薄暗い部屋にたくさんの注意書きがでかでかと貼られ、あるのは使い古した机と椅子とマットだけ。スタッフは皆疲れ切っている……。「地味を通り越して『ダサい』と感じた」と話すが、どこもそうした状況になるのは、福祉業界の構造に問題がある。
放課後デイを利用できるのは、原則10人と決まっている。そこがオシャレだろうとダサかろうと収入は同じとなる。佐藤さんは綺麗な施設にするため、設備投資を積極的にしている。しかし実はビジネス面だけでみると、内装は簡素で、パソコンやゲーム機も揃えず、できるだけモノを増やさない空間にしたほうが利益は残る。
また、福祉施設の運営母体はアイムのような持ち株会社と非営利団体の2つに大きく分けられるが、非営利に関してはサービス業の意識が希薄なところが多く、10人という定員さえ満たせれば設備に積極投資する発想も生まれない。法人税もかからないので設備投資に再投資すればよさそうなものだが、そういった発想をできる人材が福祉業界には少ない。
「だから僕は『ぼろ施設、ぼろ儲け』と言っていますよ」
冗談交じりのこの一言は、福祉事業の問題点を鋭くついている。
どうせ自分の次の仕事は見つからなさそうだし、いいと思う預け先も見つからない。「それなら、自分で立ち上げてしまおう」。行動力のある佐藤さんは2015年3月、息子が通って楽しい放課後デイを立ち上げた。
「綺麗でオシャレ」を目指して倒産寸前に
異業種からの参入ということもあり、利用者は想定のように伸びなかった。5月までの最初の3カ月で資金を食いつぶした。撤退も検討したが、やはりオシャレな施設にすることはやめなかった。「息子が通いたくなる場にする」という軸があったからだ。
経営パートナーと話し合い、もう1カ月だけ続けた。すると6月から利用者が増加し、売り上げも伸びてきた。
エジソン高津に見学に来た訪問者は、「綺麗にしていて、儲かっていますね」との感想を漏らす。しかし前述した通り、実際はその反対だ。立ち上げ期の倒産は何とか逃れたが、5年目に入るころまでは常に資金繰りに苦労したと振り返る。
佐藤さんは、さらにもう一つの持論がある。障害者が通う場所に加え、「そこで働いている空間と従事者がかわいそうに見えることで、障害者もかわいそうだという気持ちが世間に生まれるのだと思います」。
それを逆転させるため、施設の空間とそこで働くスタッフにはオシャレであってほしいと願っている。