納税者どころか、雇用主になっている
父親である佐藤さんは、GAKUさんの絵を次のように分析する。
「GAKUのハッピーになれる絵は、うちの『楽しい福祉』という方針と同じところから来ている。彼の楽しい環境を福祉施設で追求した結果、彼はその楽しさを絵に反映させることができた。もし、彼にとってつらい場所を与えてしまっていたら、つらそうな絵になっていたでしょう。
療育と称して力ずくで訓練して管理する必要などなく、楽しく過ごせる環境を与えればいいのです。障害者にとっては、環境づくりがすごく重要になります」
GAKUさんの活動を支えるための体制も整えられている。創作活動を支える古田さんだけでなく、ほかにもライセンス営業、デザイン、広報などの担当もいる。
「『障害者を納税者にしていこう』みたいな話が、福祉ではよくされます。しかし、GAKUはそれをすっ飛ばして、雇用主になっています」
自由な環境を与えれば、身体の特性も個性に変えられる
佐藤さんは、障害者は福祉施設に縛られるのではなく、施設外との社会性を持つことが重要だと考える。
「GAKUは、大きい会場で自分の絵が展示されることや、コラボ商品が世に出ることに喜びを感じています。社会とつながることで、より人生が充実する。ビジネスもその一つだし、イベントを開催してお客さんに来てもらうのでもいい。こうした記事を見てもらうのもそう。社会的なフィードバックが得られる福祉を実践していきたい」
施設利用者の中から、GAKUさんに続く才能を見出す試みも始めている。
「GAKUの障害は、自閉症です。自閉症そのものは、個性でなく生まれ持った特性に過ぎない。その特性を解放できる自由な環境を与えれば、特性を個性に転換できる。その中でGAKUのように、個性的な才能をビジネスにつなげることができれば理想的ですね」