最終経験職種別の平均年収を英語レベル別で比較すると、ほぼすべてに近い職種で英語レベルが「ビジネス会話以上」のほうが「日常会話以下」よりも平均年収が高い結果となりました。最も差が開いたのは、金融・銀行・証券などの「金融関連職種」で約1.6倍差でした。背景として、金融業界はコロナ禍でDXが推進され、新たな採用ニーズが発生しており、求人数も多いことが挙げられます。次いで差が開いたのは「エグゼクティブ/経営」で約1.4倍差となりました。社内でのポジションが上がるにつれて、求められる英語力も高まる傾向があるようです。
調査結果からうかがえるのは、若年層よりも経験豊富な中高年層のほうが、英語力を求められているということです。一般的に英語力を持った人材は、中高年層よりも若年層のほうが多いと思います。しかし、若年層は英語力があっても、入社して、まずは仕事を覚えることから始まるため、英語を実務で使うことが意外と少ないのです。
年齢とともに実務経験を重ねるにつれ、海外との連携などで英語力を求められることが増えてきます。そのため、若年層では英語力のある人材が多くても、英語力を求められる仕事の需要が少なく、逆に中高年層では英語力を必要とする仕事の需要が多いのに、英語力のある人材が少ない状況にあります。こうした需給バランスからくる希少性が、英語力による年収差に表れています。
なお、同じ会社の中で英語力の必要な部署に異動しても、年収はそれほど上がりません。一方、転職の場合は前職よりも高給でスカウトされるため、英語力を高めて転職したほうが、年収が上がる可能性は高くなります。
英語力の必要性はますます高まっている
日本の求人市場において、英語力の必要性はますます高まっています。その理由はおもに2つあります。1つは産業構造の変化です。情報通信技術の発達により、経済の中心を担ってきた伝統的企業が、技術に強い海外企業と連携するケースが増えました。そこで英語でのコミュニケーションが以前にもまして求められています。企業のニーズと連動してバイリンガル人材の動きも盛んになっており、Daijob.comの新規登録者数も昨対比で約30%増加しました。
もう1つの理由は、日本の労働人口の減少です。どの企業も新事業を立ち上げたり、DXによって生産性を高めるために、新たなスキルを持った人材を必要としています。しかし、そうした人材を社内で育成していては、変化のスピードに追いつけません。そこでスキルを持った人材の外部からの採用が活発化しています。しかも、日本人のマーケットだけでは人材が不足しているため、外国人の採用が増えています。特にコロナ禍以降、外国籍のIT人材の採用が一気に増えました。そのため、社内コミュニケーションにおいて英語が必要となっているのです。英語を社内公用語としている企業も少なくありません。
最近は日本でも、ジョブ型雇用を行う企業が増えています。オールマイティな人材が求められたメンバーシップ型雇用とは異なり、職務内容が明確なため、英語力の必要性も明示されています。ここでも英語力があることは武器になりやすいはずです。