開成の算数は「めちゃ簡単だった」から起きた悲劇

また、算数に関しては、誘導形式問題の増加が目立った。とりわけ注目すべきは開成の算数入試だ。今年の開成の算数入試は、ひと言で言うと「めちゃくちゃ簡単」だった。合格者平均点は76.4点(85点満点)で4科目の中で最も高い。得点率で換算すると89.9%で、ほぼ9割に達した(過去の試験の算数の合格者平均点は22年度60.7点、21年度55.8点、20年度49.5点)。

おそらく入試直後「できた!」と手応えを感じた子の多くが、オンラインでの合格発表で自分の受験番号がなく「まさか、そんなはずない」と絶望した子も多かったと思われる。

なぜなら、このような年は、算数ができない子はもちろんのこと、算数だけが得意という子もはじかれ、不合格になることが多いからだ。たとえ他3科目が今ひとつでも算数で逃げ切ろうという算段が崩壊してしまうのだ。

大問5(4)が合否の分かれ目

合否の分かれ目の一つとなったのが、大問5の整数の問題だ。(1)から(4)の4問で構成されている大問5は、(1)〜(3)までは、情報を読み取りながら誘導に乗って取り組めば、開成受験者にとっては何ということもない問題だ。

ところが、最後の(4)で手が止まった受験生がいたと予想している。そして、半数近くの受験生が、「あれ? ……、そうか、そういうことだったのか!」と気づいた。この受験生たちが合格者平均点を89.9%に押し上げたのだ。

撮影=プレジデントオンライン編集部
開成中学の算数「大問5」

結論からいうと、(1)〜(3)の問題は(4)を解くための問題だったのだ。(1)~(3)は(4)を解くための考え方一つひとつを予行演習させてくれていた。(1)~(3)を丁寧に「なぜ、そうなる」「だったら、どうなる」を考えて解いた子なら(4)の問題の意図に気づけただろう。逆に目の前の問題を解くことで精一杯の子は、この関連性に気づけなかったに違いない。