頭文字の「K」から透けて見える韓国の自信

ある時点まで、韓国のコンテンツ産業のベンチマークは日本だった。これは否定できない事実だ。しかしそれから独自のビジネススキームを構築し、結果に結び付けていることもまた否定できない事実である。

日本はもはやこの領域でもアジアのトップではなく、上から目線で眺めている立場にはない。これからは学ぶ立場になっているのかもしれないという自覚を音楽産業界、ひいてはコンテンツ産業界は自覚することが必要だし、日本政府も同様の自覚を持つべきだろう。

コロナ禍において、日本の報道で韓国の対応をK防疫と呼んでいたが、これは検疫システム、アウトリーチキャンペーン、テスト、および接触追跡を含むウイルスの拡散を制限するために使用する戦略を指す、韓国保健福祉部が発案した用語である。一時期は機能不全に陥り揶揄されることもあったが、韓国政府が自ら「K」と頭につけている点に注目したい。K-POPと同様、韓国の独自のスキームや事象に「K」と語頭につけて呼ぶことは、明確な自信の発露として捉えていい。

2027年には1人あたり名目GDPでも抜かれる

確かに、韓国の名目GDP(国内総生産)は2020年のIMF統計によれば、世界で10位の規模になっており、ロシア、ブラジル、オーストラリアの上位にある。G7が拡大されれば参加も当然の位置にいる。

増淵敏之『韓国コンテンツはなぜ世界を席巻するのか』(徳間書店)

それでもまだ日本の3分の1程度の規模ではあるが、例えば、日本経済研究センターは2021年12月15日、個人の豊かさを示す日本の1人あたり名目GDPが2027年に韓国、28年に台湾を下回るとの試算を発表した。日本は行政などのデジタル化が遅れているために、労働生産性が伸び悩んでいることが主な原因とされている。

これが現実だ。現在も韓国の経済状況についてはさまざまな意見があり、前記の統計を額面どおりに受け取れないという向きもあるが、特定の企業、産業の勢いを無視はできない。

半導体、スマホ、一部の家電製品では、韓国のアドバンテージは海外市場でも顕著なものがある。すべてがうまくいっているとは限らないが、20年前と比べれば「天と地」だ。「K」がこれからの世界のトレンドを牽引する存在になる可能性は充分にあるだろう。

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