韓国は音楽の「輸出」が国内と同程度にまで成長

早稲田大学MBAエンタメ学講師・中山淳雄「米国トップチャートを制したK-POP、日本音楽産業に勝機はあるのか?」(TORJA「世界でエンタメ三昧」【第68回】)によれば、10年前、日本はそのままアジア市場といってもいいほどの音楽大国で、50億ドルを超える市場規模を誇っていた。当時の韓国は、30分の1にも満たない1600万ドルだった。そこから10年で日本は半分の26億ドルにまで落ち、韓国は5倍の5.8億ドルになった。

いまだに規模でこそ日本が韓国の4倍だが、注目すべきは「輸出」だと記事では指摘している。K-POPとして売り出された韓国音楽の海外市場は、ほぼ韓国国内市場と同規模の5.6億ドル、10年で34倍になっている。海外で稼ぐボリュームで考えれば、日本の音楽市場の海外展開こそK-POPの30分の1にも満たない状況だと中山は述べている(図表1)。

PSYの「カンナムスタイル」が変えたK-POP

またK-POPライターのDJ泡沫による記事「BTS、aespa…コロナ禍でも強いK-POPアイドルの『2次元化』戦略」(「現代ビジネス」2021年9月16日付)によれば、2018年度の韓国の音楽関連産業の輸出額の割合は日本が65.1%、中国が19.8%、東南アジアが12.3%、北米1.3%、欧州1.2%(韓国の文化体育観光部と国際文化交流振興院が出版した「2020韓流白書」による数字)。

翌2019年度の音楽産業の輸出額合計は7億5619万8000ドルで、日本は55.1%、東南アジア17.1%、中国15.5%、北米10.6%、欧州3%だったとしている(韓国統計情報院の「音楽産業の主要国・大陸別輸出額の現況」による数字)。

別々の統計なので単純比較はできないが、記事では2019年について、韓国のアーティストの海外公演が多かったことも一因としており、北米市場の伸長は理解できるかもしれない。

現在、K-POPを代表するアーティストといえばBTSやBLACKPINKになるだろうが、海外展開の潮目が変わったのはPSYの「カンナムスタイル」のヒットからだ。「カンナムスタイル」は2012年7月15日にYouTubeでMVが公開されると、その2カ月後には再生回数1億回を突破した。また、ビルボード「TOP100」でも最高位2位を記録、韓国人アーティストとしては過去最高を記録した。

「カンナムスタイル」は韓国人が作詞・作曲し、歌詞の大半は韓国語であるにもかかわらず、北米で初めて大ヒットした楽曲になった点で歴史的なできごとであり、その後にBTSやBLACKPINKのヒットがあったと考えられる。