歴史の中で時間の捉え方は変化してきた

だが歴史のなかでは、時間が常にそう思われてきたわけでは決してない。

ウィリアム・ストラウスとニール・ハウは著書『フォース・ターニング 第四の節目』(ビジネス社)で、時間の概念が人類の歴史のなかでいかにしてつくられてきたかを、非常にわかりやすく解説している。

その内容を簡単に紹介すると、人間はこれまで次の「3つの異なるかたち」で時間を捉えてきたことがわかる。

1.無秩序なもの

人間は数十万年前ごろから社会集団を形成するようになったが、それ以前の初期の人類は時間を無秩序なものとみなしていた。すべてのことは偶然に起こり、そこには原因も結果もなければ、理由も根拠もなかった。

2.周期的に巡るもの

その後、社会集団が発達し、自然についての知識が多少増えてきた約4万年前ごろから、人間は時間を周期的に巡るものとみなすようになった。時間の歩みは太陽(周期1日)、月(1カ月)、星座(1年)の動きのように永遠に周期を繰り返すものとされ、毎日、毎月、そして季節ごとに繰り返される人間の生活に反映された。

3.一方向に進むもの

作家たちが「歴史は前に進むことでつくられる」と著していたように、ほぼ全世界で「時間は永久に前に進むもの」との見方に変わっていった。そのため、16世紀には「一方向に進展する出来事」という発想が、時間の概念としてすっかり根づいた。

写真=iStock.com/DKosig
※写真はイメージです

時間は常に前に進むものなのか

人間の時間の概念が時代とともに変化していったのは、決して不思議なことではない。私たち人間が、宇宙と時間の実体についての新たな知識を常に増やしつづけているなら、そうした変化はむしろ当然のことだ。

それはつまり、この先時間についてのさらなる知識が増えれば増えるほど、私たちの時間の概念がふたたび変化する可能性が、よりいっそう高くなることも意味している。

私たちはなぜ「時間は永久に前に進んでいくものだ」と、こんなにも強く信じ込んでいるのだろう

物理学者ブライアン・グリーンは著書『時間の終わりまで物質、生命、心と進化する宇宙』(講談社)のなかで、将来への時間の流れを「変わることなく一方向に進むもの」とみなす今日の私たちの考え方が、「熱力学の第2法則」と「エントロピー」の発想に、いかに関係しているかを解説している。

エントロピーの考え方とは「物質(少なくとも、私たちが感知できる物体)は常に『消失、減少、自然崩壊』の道を辿り、そしてより無秩序になる」というものだ。