年を取るにつれて時間の流れが速く感じられる
10年後、アインシュタインは「一般相対性理論」を発表し、時の経過は重力の影響も受けていることを示した。「時間の遅れ」として知られるこの現象は、地球でも起きることがわかっている。
研究者たちは、原子時計のおかげで、地球でのわずか30センチの標高差が時間の経過に影響を及ぼすことを実証できた。
つまり、そうしたきわめて精度の高い時計を「エベレストの頂上」と「ロサンゼルス」にそれぞれ置いておくと、2つの時計はやがて異なる時刻を示すのだ。
時間は物理的要素に加えて、「時が経つという感覚」によっても計ることができる。
「主観的時間」としばしば呼ばれる時間のこの側面についても、これまで大々的な研究が行われてきた。
たとえば大多数の大人は、年を取るにつれて時間の流れが速く感じられる。
子どものころは夏が永遠に続く気がしていたが、大人になるとあっという間に年月が過ぎていくように感じるというものだ。
時間の感じ方には脳の画像処理能力が影響している
デューク大学の研究者が最近発表した説によると、小さいころの記憶のほうが大人になってからのものよりもずっと長く残っている理由は、人間の体が老化するにつれて、脳による「画像処理」の速度が遅くなるからだそうだ。
つまり若いときは、経験したことが急速に画像化されるため、思い出として残る画像数が多い。したがって、それらの出来事が起きていた期間が長く感じられる。
一方、脳の画像処理能力は年々低下するため、大人になってからの思い出の画像数は少なくなる。だから大人のときの記憶は短時間で次々に辿れるので、時間が速く進んでいるかのように感じられるという。
時間についてのここまでの話は、何を意味しているのだろう?
それは「時間は、私たちが思っていたものとは異なる」ということだ。
それでもなお、私たちは時間について「予測どおりに例外なく、一方向にまっすぐ進んでいくもの」と考えてしまいがちだ。
ひとたび経験したら、もはや後戻りできない過去になる一連の「いまこの瞬間」を進んでいくかたちで、時間の流れを感じているからだ。
そして、矢を前方に向けて放つのと同様に、放つ前の過去に戻ることも、過去を変えることもできなければ、矢が向かっている先である将来を確実に知ることもできないと思っているのだ。