反社じゃないのに排除される

テキヤへの締め付けは、誰にとっても益がない。

たとえば、筆者の生活する福岡市では、九州の夜の街を代表する中洲のイベント「中洲まつり」がある。このイベントも、数年前からテキヤの屋台が姿を消し、素人の飲食ワゴンなるものが台頭した。

お祭りのプロであるテキヤの声も響かず、品揃えも十分でないため、祭の殷賑いんしんが半減し、博多っ子も「今日は何がありよっと? あ、中洲まつりね」という具合である。

この飲食ワゴンを出しているのは中洲に店を出している飲食店などである。これは、出店者側も面倒この上ない。自分の店舗を二の次にして、慣れぬ出店に人員を割かねばならないからである。

ヤクザとの接点

襲名披露(襲名式)、縁組の盃をはじめとする盃事については、テキヤ自身のものと、テキヤが助っ人に呼ばれる場合の解説をする必要がある。

前者はテキヤの代目披露や兄弟盃等の儀式である。

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後者は、テキヤがヤクザに依頼されて媒酌人を務める盃事である。

テキヤ自体も、盃事は稼業上欠かすことはできないが、ヤクザは尚更である。作法に則って盛大にやるのが襲名披露であり、当代の親分から次の親分候補に代を授受する跡目公式発表の式である。

こうした神事は、古式に則って行われるが、格式張っているから作法通りにできる人間が、そんじょそこらには居ない。そこで、テキヤの出番である。

廣末登『テキヤの掟』(角川新書)

テキヤは寺社仏閣に馴染みがあり、そうした修業が行き届いているから、ヤクザの盃事があると、媒酌人として白羽の矢が立てられる。

もちろん、寺社仏閣を庭場とし、テキヤ社会の社交性の上に立って、諸披露の式を行ってきたテキヤからしたらお家芸であるし、商売の邪魔をされないためにも、大なり小なり関係する相手ということもあり、作法に長けた幹部が、若い助手を連れて媒酌人の任を果たす。

東京では、浅草の雷門を本拠地とする丁字家会が有名で、吉田五郎最高顧問は「平成の名媒酌人」と呼ばれ、六代目山口組、五代目稲川会、六代目松葉会、四代目道仁会など大組織の媒酌を行っている。