わずか1カ月で過去3年間の14倍もの死者が出ていると発表

――中国政府は22日、ゼロコロナ対策転換後の死者数を7万2596人だと発表しました。2020年初頭から2022年12月7日まで約3年間の累計死者数が5235人でした。わずか1カ月でその14倍もの死者を出した計算ですが、この数字ですら過少だと批判されています。

高齢者を中心に多数の方が亡くなられていることは間違いありません。私の周囲でも、高齢の家族が亡くなられたという話はよく聞きます。所属する大学でも、引退された研究者の訃報がひっきりなしに届いています。

そうした死者のほとんどは、コロナによる死としてカウントされていません。「コロナによる死」と判定する基準が厳格化され、細菌性の肺炎やその他持病との合併症で亡くなられた場合には、カウントしないことが決められました。加えて、地方政府や個々の病院がなるべくコロナによる死を少なく見せようと忖度そんたくする動きもあります。コロナで亡くなった方の大半は別の死因でカウントされています。

――ウィキペディア中国版に「今月亡くなった著名人」という項目があります。2021年12月に掲載されているのは119人に対し、2022年12月は423人と3.5倍に増えています。一部に外国人を含むリストですし、コロナ流行期で著名人の死が注目されやすいというバイアスもあります。その意味ではあまり当てにはできないのですが、それでもこの数は……と言いたくなります。

画像=「中国語版ウィキペディア」より
ウィキペディア中国版の「今月亡くなった著名人」という項目に記載されているリスト。2021年12月31日は3人の名前が記載されている。このうち2人は外国人のため実質的に中国人は1人
画像=「中国語版ウィキペディア」より
2022年12月31日に亡くなった著名人のリスト。18人が記載されていてこのち4人が外国人のため、実質的に中国人は14人

発表されている以上の死者が出ている可能性も

リストを眺めると、ほとんどが80代以上の高齢者ですが、若い人の名前もちらほら。たとえば、人気ゲーム「原神」のコスプレイヤーとして知られた依川川さんは24歳という若さでなくなっています。中国メディアの報道によると、コロナの症状が出てから10日後に亡くなったので、「多分、コロナ関連だろう」と死因が書かれており、おそらく死亡診断書は別の死因になっているのではと推測されます。

画像=依川川さんのツイッターアカウントより
亡くなる直前の投稿。人気コスプレイヤーで、ツイッターのフォロワー3万2000人、中国版ツイッター「Weibo」では46万2000人のフォロワーを抱えており生前の人気がうかがい知れる

――となると、実際の死者数はどの程度か気になるわけですが……。

中国の不活化ワクチンを活用していた香港のデータからある程度の推定ができます。80歳以上で、かつワクチン未接種の場合の死亡率は14.3%という高水準に達しています。一方で、中国シノバックの不活化ワクチンを3回接種していた場合には2.6%、ビオンテックのmRNAワクチンであれば1.3%にまで死亡率は低下します。

中国の80歳以上の高齢者は約2743万人。うち未接種が23.4%、1回接種が10.8%、2回接種が25.8%、3回接種が40%と発表されています(中国国家衛生健康委員会、11月29日発表)。すると、未接種の80歳以上の高齢者だけで、高齢者2743万人×ワクチン未接種率23.4%×死亡率14.3%×感染率90%、ざっくり82万人が亡くなる計算です。ワクチンを接種した高齢者や80歳未満の死者を含めれば、100万人を超える死者が現在進行形で亡くなりつつあると推計されます。

――日本では、80歳以上の高齢者のワクチン接種率(3回)が90%を超えているので、雲泥の差ですね。