そもそも「豚丼」はいつからご当地グルメになったのか

――そもそも「豚丼」はいつから、帯広のご当地グルメになったのでしょうか?

【小野寺】豚丼の元祖は、1933(昭和8)年に帯広市内のお店で出されたのが始まりと聞いています。90年近い歴史があることになりますね。 

十勝では養豚業がはじまったのは明治時代末頃で、豚肉は当時から庶民の間でも食べ親しまれた食べ物だったことも関係しているのではないかなと思います。

豚丼を売るのではなく“手間暇”を売っている

【小野寺】1つは、先代の時代からお世話になっている地元の精肉店さんからお肉を仕入れていることですね。そのお店は、十勝産豚肉の中でも良質なお肉を、しっかり低温熟成させてからブロックの状態で卸してくださっているんです。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ぶた丼のとん田の「ロース・バラ盛り合わせ」

それを職人さんが丁寧に筋を取り、豚丼用の厚さに1枚1枚手切りでカットしていくので、仕込み時間はかなりかかります。ただ、この手間が、十勝産の質の良いお肉がさらにやわらかく、おいしくなる理由です。

――肉を切るのにも職人技が求められそうですね。

【小野寺】習得できるまでの期間は人によって異なりますが、習得するほうも教えるほうも大変ですね。私が先代のもとで修業させてもらったときは、肉の手切りのOKが出るまでに5年くらいかかりました。  

――それだけ大変な作業を続けるのは、お客様に豚丼を安く提供したいからですか?

【小野寺】お客様に対していいものを少しでも安くという想いがあるのはもちろんですが、「豚丼を売るんじゃなくて手間ひまを売る」というのは先代の教えでもあるんです。なので、どんなに大変でも、手間ひまを売る。そこだけは絶対に崩さないようにしています。