「売り上げが減少するのは民間の問題」という国のズルさ
インボイス未登録事業者との取引を続ける場合でも、発注元の会社が、インボイス未登録事業者に対して、消費税を支払わなくなる、という対応も予想されます。
そもそも、免税事業者が消費税をもらっていいのかという論点があります。
消費税法によりますと、免税事業者は消費税の受け取りを予定していないと書かれています。免税事業者は消費税をもらわないのがそもそもの前提なのです。
ただ、発注元の会社が一方的に価格を引き下げるのは、独占禁止法における優越的地位の濫用であるとされています。そのため、国も「勝手に消費税分をカットしちゃだめですよ」と発表しています。
ただ、逆に言うと、「協議すれば消費税分をカットできる」と読むこともできるわけです。
国としては、インボイス制度の導入後も、免税事業者が消費税を請求するのは自由という立場です。
ただし、会社が消費税分を払わないのも自由であり、国は民間に口出ししません、という立場でもあるのです。
このあたり、国の対応はズルいと批判されそうです。
「国家による国家のための制度」が大混乱の原因
一応、経過措置として3年間は、インボイス未登録事業者に支払った消費税の80%は会社側も控除できることになっています。
ただ、今後免税事業者と取引をしないと言い出している会社もすでにあります。
個人事業主としては、売り上げが減るどころか、仕事がなくなるかもしれないという状況に陥っているわけです。
要するに、インボイス制度のデメリットの中で、最も影響が大きいのが、免税事業者の売り上げが減少するという問題なのですが、これに関して、国は基本民間任せで、問題の原因をほぼ放置している状態なのです。
そのため、このインボイス制度が、まさに国家の国家による国家のための制度になりかけており、それこそが、今回の混乱を招いた最大の原因だと思われます。