まずはS君と二人で店舗に入り、どちらかが営業をします。契約が取れるとがっちり握手し喜び合い、うまくいかないと慰め合いました。これだけでも、一人で黙々と営業を続けるより、モチベーションが上がります。
ある商店街に入ったときのことです。
店主が僕らの持っている地図を指さし、「この商店街で他に入っている店はあるの?」と聞いてきました。「このお店と、このお店です」と話すと、「じゃあうちも入る」と契約してくれたのです。お店を出て恒例の握手をした後、僕らは作戦会議を開きました。
地味な仕事こそゲーム感覚で面白く
「どうやら他の店が入っているかどうかが、契約する上で重要な情報らしい」
そうであれば、順番に回るのではなく、広告を出したがっていそうな店を攻略した後、次のレベルの店に営業していこうと決めたのです。
お金に余裕がありそうな店舗には、「冊子が数千人に届くので、広告と思って入ってください!」と言って契約してもらいます。
同じレベルのお店に一通り入っていただくと、「もうこんなにたくさんのお店にご加入いただいています! 枠に限りがあるのでお早めに!」と言って、次のレベルの店舗を狙います。
「入らないと置いていかれる感」を出して営業することで最終的に、商店街の8割程度がフリーダイヤルに契約してくれました。
もはや僕らの仕事はフリーダイヤルを売ることを飛び越えて、ゲームのような楽しさになっていました。トークを変更するともっと効果が上がるのではないか? 店舗間のライバル関係を探って、競争相手が入っていると知ると「うちも!」となるのではないか? などとアイデアを出してはすぐ試して、効果を検証し、どんどん好循環が生まれていきます。
結果として僕らは販売の功績を認められ、営業部長から表彰されたりするのですが、そんなことよりも僕にとっては契約をもらってお店を出たときに、S君とニヤリとしながら握手をするときの爽快感がなんともいえない報酬でした。
与えられた仕事はフリーダイヤルを売る面白くない仕事でした。しかし、僕らは営業戦略を立案し、さらに成功確率を高める調整をし、楽しい仕事へとカスタマイズしていったのです。