親しい人もなぜ「全消去」したのかわからない
引っ越しや転職、進学、就職などをきっかけに連絡を絶つのは昔からよくあることだが、前述のように、周囲からはきっかけもわからず突然消えてしまうこともある。中には電話番号まで変えてしまう人もいる。
それだけでなく、SNSのアカウント削除、LINEの友だち削除、連絡先消去などをするため、まったく連絡が取れない状態となるのだ。
排除する人間関係は、親しくない人はもちろん、親しい人も含まれる。親しかった場合は特に、自分が悪かったのか、何とかできなかったのかなど、悩む人も少なくない。
曖昧な関係を許容できない若者たち
筆者の周りにも、SNSで突然消えた人が何人もいた。「やめます」と宣言して消えた人、「友だち全削除します」と言って実行した人、定期的に何度も繰り返す人。すぐに戻ってきた人もいたが、二度と戻ってこず、連絡が取れなくなってそのままの人もいる。
結局、SNSに戻ってきた1人は「疲れたから。いろいろと悩むくらいなら、もうSNSは使わなくてもいいかと思って」と振り返る。
本人曰く、追い詰められていっぱいいっぱいになった結果だという。
「友だちを一人ひとり削除しようと思ったけど、選ぶのもストレスだし、後でもめるくらいなら自分がいなくなった方がいいと思って。削除したらめちゃくちゃすっきりして、何で悩んでいたんだろうというくらい、気分がよかった」
「でも、問題ないんじゃない」と首を傾げながらいう。「中途半端な関係でつながっているより、付き合いたくないなら切ればいい。どうせネットで知り合った同士だし、相手も気にしていないんじゃないかな」
現実世界では関係性には濃淡があったり曖昧なものだが、SNSではつながるか切れるかの二択だ。また、SNSではブロックしたり切ったり、友だち関係は容易に整理することができる。SNSというツールに引っ張られて、曖昧な関係を考えられなくなっているのではないか。