議員自らが身を切る覚悟がないと人は動かない

防衛費を1%から2%に増やすという枠組みを先に作って、それに合わせるべく、議論なくして負担を強いようとすれば、反発を受けるのは当然ですよ。国会でも議論せず、閣議決定だけで決めたのですから、国民の理解を得るという意味で後手に回っているなと感じます。

企業の内部留保が増えているから法人税を上げるといったって、業績が上向いているのは、ほんの一部の大企業にすぎません。日本の企業の99%以上は中小企業で、ぎりぎりの経営を続けている会社がほとんどです。負担を軽くするとはいえ、大企業の負担増加のしわ寄せは、下請け、孫請けの企業にきます。就業人口の70%はそうした中小企業に勤める人たちなんですから、生活は苦しくなっていくばかりです。このタイミングで法人税が上がれば、給料を上げられなくなる企業がたくさんあるはずです。

増税の理解を得たいならば、その前に国会議員の定数を2~3割削減するとか、給料を3割カットしてボーナスは支給しないとか、国会議員自らが身を切る覚悟を示さないとダメです。現に地方議会では、議員定数を削減しているんです。そうでなければ国民は、俺たちも協力しようという気持ちになりませんね。

岸田首相が再浮上する2つの道

岸田総理の立場からすれば、一昨年の総裁選挙で再選され、与党は衆参で過半数を持ち、「黄金の3年」と呼ばれる期間です。5月には、G7(主要国首脳会議)広島サミットが控えています。世界で唯一の被爆国の、しかも被爆地出身の内閣総理大臣です。安倍政権の外務大臣としてオバマ大統領を広島に迎えた実績を上回る成果を、ぜひとも上げたいと考えていることでしょう。

歴史に名を記したいと思ったら、サミットの議長国として、核廃絶に向けての画期的なステートメントを出すほかありません。バイデン大統領は長崎へ行く予定も組まれているそうですから、何かコメントを出すはずです。

私の妻の父は、被爆者でした。原爆の後遺症で苦しんでいる人は、いまもたくさんいます。せっかく広島でサミットを開催するのなら、核を使ったことに関して、アメリカ大統領から日本社会に反省やお詫びの言葉を言わせるべきです。アメリカは核を投下したことに対して「使ってはいけないものを使ってしまった」と日本、世界に向けて、けじめをつけるべきではないでしょうか。

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