パワハラ人材が役員になる理由

「こんなに犠牲を払って成果を出しても、褒められないのでは……」という状態も、目にすることがあります。

よくあるのは、財務諸表の数字だけ見れば業績は良好に見えますが、メンタル不調による休職者が多くいるというパターン。それが常態化して、ハラスメントなどを原因としたメンタル不調は「このくらいあっても普通」、「昨今ではめずらしくない」と認識されていることもあります。

これはまさにある程度の「犠牲者」を出すことが、認められてしまっている状態です。

もし組織が、メンタル不調で休職中の社員が全体の○パーセント、今どきこのくらいは普通という割り切り方をしていれば、相談者の方を悩ませている「パワハラ人材が役員になること」は、不思議ではなくなってくるでしょう。

「犠牲」は、有価証券報告書や財務諸表に表れるものではありませんが、業績に対して、どのくらいの犠牲が払われているかは、注意深く観察してもよいテーマだと思います。

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「犠牲」を気にする経営者と気にしない経営者の違い

組織には、犠牲を気にする人、気にしない人、どちらのタイプの人が存在していてもおかしくありません。ここでは経営者を例に、その見分け方を1つ紹介します。

たとえば、ゴールデンウィークや夏休みなどの大型連休に入る前に、経営者の方が、従業員の皆さんの前であいさつをされる機会があるのではないでしょうか。

そのときに注意して聞いてみましょう。彼らの話し方には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1つは、「連休を迎えるこの機会に、日頃から皆さんを支えてくださっているご家族の方々に感謝しましょう」という手合いのことが述べられるパターンです。

「従業員の方たちのご家族の支えがあって、組織は従業員を迎え入れることができ、ありがたく思っています」というニュアンスのあいさつをされる方。現状を支えている目に見えないものに想像が行き届き、敬意を持たれていることが伝わります。

こうした話をする人たちは、本当にそう考えていて、従業員からも尊敬されていることが多いものです。

これに対してもう1つは、組織の業績などについて話し、「ぜひこの休みに鋭気を養って、元気に戻ってきて、また頑張ってほしい」という話がされるパターンです。一見常識的なことを話しているようにも聞こえますが、こういう話をする経営者は、「自分が雇用してやっているおかげで、従業員の家族もこうして休暇を過ごすことができる」という感覚でいることが多いのです。