みんな野球帽を被る西成スタイル
「役所のやることは、もうホンマわからん。どこの馬の骨かもしれん人間がジャンジャン西成に流れてきて、若いのも年寄りも、みんな簡単に生活保護を受けさせよる。で、その金でバクチや、酒や、クスリや。酔って人様に迷惑かけて、全部いらん金やで。ほんまに、困った困った、駒田選手。しまったしまった、島倉千代子ですわ。あ、この言葉、わしが考えたんや、あんたパクったらあかんで」
そう語るのは、大阪市の西成区、通称「あいりん地区」に住む内山真一さん(仮名)。自身も5年前から市の生活保護を受け、この街で暮らしている「受給者」だ。全国的に知られるドヤ街・西成。わずか500メートル四方のこの地域には2010年4月現在、6万9989世帯が居住しているが、その約3分の1にあたる2万4550世帯が生活保護の給付を受けている。近隣には安宿や大衆食堂、安酒場がひしめいており、一部では「受給者の天国」とまでいわれるエリアだ。
「4~5年前から、ヨソから西成に流れてくる人間がものすごく増えた。ここならすぐ生活保護を認めてくれるゆうて、住民票移してくる。裏でこっそり仕事しているヤツもおる。飛田で女買うのもおる。そいつらをボロ屋に住まわせて、生活保護費をピンハネする業者までおる。おかげで受給日の役所は大行列やで、かなわんわ。困った困った駒田……」
筆者が西成を訪れたのは、この地区の生活保護支給日。区役所には開所前から数百人の受給者が長蛇の列をなし、行列は時間が経つほどに長くのびていった。ゆうに1000人は超えたであろう受給者たちを数十人の職員が丁重に誘導する様は、ほかでは見られない光景だろう。午前9時、10万円ほどのお金が入った封筒が次々と受給者たちに渡されていく。億単位のお金が1時間もせずになくなったのを見て、ちょっと頭が痛くなった。