「誤算ですよ。まさかこんなにかかるとは……」――肩をがっくり落としたまま、仲本茂樹氏(仮名、51歳)は悔しがる。妻(46歳)と女・男の2人姉弟の4人家族。首都圏郊外で購入した一軒家から都内中堅メーカーに通う。長女は4年前、みずから「中学受験がしたい」と塾通いを始めた。

仲本氏は晩飯を水か“もずく”で我慢してバックアップ。私立校の授業料を考えると、年収570万円弱の仲本氏も気が気ではなかったが、「めでたく失敗、公立へ行ってくれた(苦笑)」。その後も月2万円の個人塾に3年通った末、今春に第一志望の県立高校へと進学した。

初期費用は入学金5650円と通学用の自転車1台分ですむはずだったが……。

「入ったバスケ部が県内有数の強豪。毎週土・日はすべて他校への遠征。夏休みなんて、3泊の合宿を4回ですよ」

この費用がバカにならない。遠征時は、電車代とコンビニ弁当代で1日3000~5000円が消える。月々の手取り40万円、うち住宅ローンが15万円(25年ローン、残り5年)。そこから3万~5万円弱が飛ぶのはつらい。

「夏合宿では合計11万円が消えました。ユニホーム代4万円の請求書が手元にありますが、まだ払ってません」

2カ月ごとに4万円弱、年内に計12万円支払う修学旅行の積立金が、仲本氏の神経をさらに逆撫でした。

「高校の授業料無償化に賛同して民主党に1票入れたのに……。長女は帰宅が10時、11時。塾に通う暇もないが、自宅では1秒たりとも勉強していない。逆に、中1の長男は塾にも行かせず放ったらかし。2人ともグレてないのが救い」

倹約も限界に近い。昼は同僚の誘いを断り、1人オフィスでカップラーメンかコンビニのおにぎり。晩飯は1パック95円のもずくの代わりに3パック68円の納豆を1パックのみ。自宅のパソコンが壊れたのを機に、ネットをやめた。学校とのやりとりは今やメールが主流だが、仲本家の分だけプリントを貰う。

「休日の朝、ゴルフに行く直前にファンヒーターが壊れた。かみさんが怖くて、その日にゴルフ代と同価格のを即買い。洗濯機もガタガタ鳴り始めた。次は冷蔵庫か……家電が寿命を迎えるのが怖い」

昨年の台風ではがれた自宅の天井も、ガムテープで張りつけたままだ。