毎回鋭い発言をする必要はない
加えて、この効果をより確実に使うには、周囲から「いつも一番はじめに何かいう人」というレッテルをあえて貼ってもらうといいことも経験から学びました。自分以外の複数の人から意見が出てくる可能性のある場では、毎回、自分が一番はじめに発言するのです。
すると、会議の冒頭で周囲の人からあなたの発言に注目が集まるようになります。ポイントは口火を切ること。いつもいつも鋭い発言である必要はありません。意見ではなく、全体に対して疑問を投げかけたり、問題提起をしたりするだけで十分です。
私も東京大学の大学院に入学したばかりの頃、毎回のゼミで「一番はじめに質問をする人」という認識を持ってもらうように振る舞いました。そうすることで、私の質問(問いかけ)からゼミの議論をスタートすることができ、個人的には非常に多くの学びを得ることができたと感じています。
ビジネス上の会議とは異なる面があるかもしれませんが、限られた時間の中で自分がより多くの学びを得るというメリットを考えた重要なコミュニケーションだと考えています。
人の行動を操れる「円卓のナプキン理論」
なぜ、私たちは会議の冒頭で発言した人の意見に強い影響を受けるのでしょうか? その心の動きは「円卓のナプキン理論」と呼ばれています。
円形のテーブルの上に人数分、左右均等にナプキンが並んでいるとしましょう。どちら側のナプキンを使うか誰もが周囲の行動を観察する中、ある人が左手にあるナプキンを取ったらどうなるでしょうか?
その人の左隣にいる人は右手側のナプキンを取ることができません。その結果、円卓を囲んでいる残り全員が左手側のナプキンを取ることになります。
私たちは最初に行動した人にリードされ、結果、最初に行動した人がその空間のルールをつくることになるのです。その効果は、3人以上が集まる議論で発揮されます。
この「円卓のナプキン理論」は会議冒頭だけでなく、議論が煮詰まっているため別の話題に切り替えたり、結論が出ないままダラダラと時間だけが過ぎていく会議そのものを切り上げたりしたいときにも有効です。