だがあえて言うならば、これは「児童書」ではない

いずれにしても一通り読み終えたかぎり、ネットで多くの人が噴き上がるほどの内容はなにも書いていないというか、やはりインターネットの人びとは「読まずに叩く」が基本であることを思い知らされるばかりであった。

しかしながら、それでもあえて気になったことを挙げるとすれば、この「ひろゆき児童書」は、ジャンルとしては建前上は「児童書」ではあるが、しかし内容的にはどう見ても、本書のタイトルがまさにそうであるように「攻略本」であるということだ。

『小学館の図鑑NEO [新版]乗りもの』(小学館)

「児童書」といえば、たとえば学研から出ている『~のひみつ』や小学館の『図鑑NEO』シリーズなどが有名だが、これは「世の中には“知らないこと”がたくさんあるから、それを知るよろこびを見つけていこう」という知的好奇心や探求心を伸ばすことそれ自体を目的としてつくられている。

一方でこの「ひろゆき児童書」は知的好奇心や探求心を伸ばすことそれ自体を目的として書かれているわけではない。それらを伸ばしておくことが“人生にどう役立つか”の合理的でメタ的な理由説明に終始している。つまり身も蓋もない表現をすれば「世の中には“知らないこと”がたくさんあるから、その“知らないこと”のせいで人生を台無しにされないように備えようね」と言っているのだ。

一般的な児童書も、今回世に出た「ひろゆき児童書」も、そのどちらも「謎は謎のままにしておくべきではないよ(どんどん知っていこう)」と子どもたちに伝えていることでは同じだ。しかしその目的意識が違う。前者はあくまで「知らないことを知る純粋なよろこび」を伝えるが、ひろゆき氏は「謎を謎のままにしておくとその謎のせいで人生に損やリスクが増えるよ(最悪の場合は負けるよ)」というシビアでドライな世界観を語る。