日本語を救った「国語テスト」の結果
そこで国語研究所はGHQと共催の形で、昭和23(1948)年に全国各地で老若男女さまざまな人々に漢字の理解度を確かめるテストを行った。1万7000人が対象で、90点満点で平均点は78.3点だった。たとえ問いに対する答えは誤っていても、識字率そのものはほぼ100%に近かったのである。
この結果は、GHQのローマ字論者を黙らせるに十分であった。平均点が50点以下なら、ローマ字社会になっていたかもしれないと語りぐさになっている。
これは裏話になるが、問題を作成した国語学者たちは「実は平均点が上がるよう、難しく見えるが易しい問題を出した」とこっそり漏らしていた。
とにかくこうしてローマ字社会にはならなかったのである。第2次使節団の報告書は、小・中学校でローマ字が教えられることになって「ローマ字使用は増加」と、漢字や仮名の補完物でよいと結論づけている。
こうした例を見ると、70年前の「教育改革」はGHQへの抵抗を含めながらバランスを保ち、国民に全面的に受け入れられていったと見ることができるだろう。