元気いっぱいの生前の声が響き渡る
一夜明け、お葬式当日になりました。
斎場には開式10分前から、お父さまが撮り続けてきた映像が静かな音楽と共に流れ、故人となられたルイちゃんを思い出すのに十分な雰囲気が漂っていました。元気いっぱいのルイちゃんの声が響き渡ります。その声が聞こえるたびに、ご参列の皆さまの目にハンカチが当てられます。
「パパー」
レンズをのぞくお父さまを呼びながら、ルイちゃんが近づいてきて、画面いっぱいにルイちゃんの顔が映ります。
「ママー」
一緒に遊んでいるお母さまを呼んで、摘んだ草花を渡しています。
「マーユ」
とマユちゃんを呼びます。ルイちゃんはマユちゃんと手をつなぐと、大喜びで走り出します。
「じーじ~、ばーば~」
そう言って、おじいちゃんたちにおにぎりを渡しています。
画面には、まだルイちゃんが元気に走れたときの様子が映し出されていました。ご家族は、わずかな時間を見つけては、近場にドライブに出かけたそうです。
サラサラの細い髪をなびかせて
映像が、海に出かけたときのものに切り替わりました。ルイちゃんはお父さまに抱っこされて、砂浜から波打ち際に近づいていきます。サラサラの細い髪をなびかせて海を眺め、顔に風を受けています。ルイちゃんとマユちゃんはお顔に潮風を受けてびっくりしたようで、「わーっ」という声とともに顔をクシャッとさせてうれしそうに笑っています。パパとのおしゃべりも楽しそう。どんなささいなことにも生きる喜びを感じながら歩む家族がここにいる、そんな光景です。限りある時間を大切に刻もうとする様子が伝わってきました。
お葬式の式次第が進行し、ご遺族の言葉がご参列の皆さまに伝えられるときがやってきました。マイクが祭壇前に出され、お父さまがマイクの前に立たれます。その傍らにはお母さまと、お母さまに抱っこされた双子の妹のマユちゃんが並びました。まだ事情も理解できないマユちゃんは、指をしゃぶってお母さまの喪服にヨダレの染みを作っています。そんないたいけな姿がルイちゃんを思い起こさせ、皆さまの涙を誘っていました。