「ロシアにはまだ核がある」温和だった前首相が様変わり
かつて穏健派として知られたドミートリー・メドヴェージェフ前首相も、いまや戦争拡大の旗振り役に回った。
米シンクタンクの大西洋評議会は、「以前であれば西側に、温和かつ関係改善の希望の源と思われていた」メドヴェージェフ氏が、いまでは「明らかにファシズム的なことば」でウクライナの人々を批判していると指摘する。穏健派からタカ派へ急転したとの分析だ。
氏は国家としてのウクライナの存在を否定するなど、論理性に欠け感情が先行した発言が目立つようだ。戦争の扇動のためには、表現も選ばなくなっている。
米ニュース専門局のCNBCによると氏は、クリミア奪還を切望するキエフ政府を「ゴキブリ」「不満をこぼすブタ」などと表現している。メドヴェージェフ氏はTelegramで90万人のフォロワーを持ち、その影響力は甚大だ。
氏はまた、核の存在をちらつかせ緊張を高めた。米インサイダー誌は11月、氏がTelegram上で「当然ながらロシアは、まだ利用可能なすべての兵器、装備、武器弾薬を使ったわけではない」と述べたと報じている。
同氏は9月にも、一定の限度を超えればロシアには核兵器で自衛する権利があると発言し、「これはほぼ間違いなくブラフではない」と付け加えた。インサイダー誌は今回の発言も、「(ウクライナに押し返されるという)大敗を受け、核兵器の使用を匂わせた」ものだと受け止めている。
軍部の失態を批判し、「得点」を稼ぐ者も…
ほか、プーチン氏のもとに残留している有力者らからは、戦争推進の大合唱が聞こえる。軍の上層部を入れ替え、侵攻を加速すべきとの主張だ。
ロシア連邦内、チェチェン共和国の軍閥指導者であるラムザン・カディロフ氏は、傭兵集団トップのプリゴジン氏と同じく、軍部の失態を手ひどく批判している。
BBCによると氏は、最高司令官のひとりであるアレクサンドル・ラピン大佐について、階級を剥奪されたうえで「ひとりの兵士として前線に送られるべきだ」と発言したという。
また、与党・統一ロシアのアンドレイ・トゥルチャク党首は、自ら戦地に積極的に足を運んでいる。ロシア系ニュースを報じるメデューサはこの動きについて、足しげく戦地に通うことで政権内に存在をアピールするねらいがあると分析している。
情報筋はメデューサに対し、「アンドレイは口を動かしているだけではなく、実際に行動するのだということを示した」との見解を語っている。
トゥルチャク氏率いる統一ロシアは、戦争初期に人道物資の輸送という口実でドンバスに現地入りを果たした。人道支援センターの設営を通じて地元の支持を得つつ、以降も愛国主義的なレトリックを唱えながら、ウクライナ侵攻の正当性を声高に主張しているという。