高血圧だとなぜ悪いのか

そもそも高血圧の基準が、なぜ時代とともに変化するのでしょう。それは専門の学会で議論が繰り返され、より安全で精度の高い基準が求められるからです。公には、世界中の学会やWHOが決めたとされていますが、日本の基準は当然ながら、日本の専門家が決めています。

たしかに、基準を厳しくすれば、血圧が低めに抑えられて安全性が高まるのは事実です。さらにもうひとつの事実として、薬をのむ人が増えるということもあります。製薬会社にとってはありがたい事実でしょう。

その一方で、製薬会社から基準を決める専門家の委員に、多額の寄付が送られている事実もあります。この寄付は奨学寄付金と呼ばれ、いわゆるヒモ付きではありません。ですから、寄付をもらった委員が、患者さんの利益より製薬会社の利益を図る“利益相反”はないというのが建前です。

しかし、だれに寄付金を出すかは、製薬会社が自由に決めます。会社にとって、好ましい発言をする委員と、好ましくない意見を持つ委員の、どちらに多額の寄付をするかも自由です。もちろん、委員もその事実を暗黙の了解として心得ています。利益相反の危険性があるのは明らかでしょう。

一方で、製薬会社からの寄付がなければ、新薬開発に関わる研究が十分に行えない事実もあります。当たるか当たらないかわからない研究(新薬開発の研究で実用化されるのは、百に一つとか、千に三つとか言われる)に、政府が多額の科研費を出せないのも事実です。

動脈硬化の原因は高血圧だけではない

健診センターで診察をしていると、血圧が高いことを気にする人が少なくありません。しかし、血圧が高いとなぜよくないかを、きちんと理解して心配している人は多くありません。

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高血圧はなぜ健康に悪いのか。それは動脈硬化の原因になるからです。動脈硬化になるとなぜいけないのか。それは心筋梗塞や脳梗塞、脳出血など、重篤な病気を引き起こす危険性があるからです。

しかし、動脈硬化は高血圧だけで起こるのでしょうか。ちがいます。

動脈硬化の原因には、ほかに喫煙、肥満、高脂血症、糖尿病、ストレス、遺伝的体質、加齢などがあります。これらを動脈硬化の危険因子といいます。

ですから、煙草も吸わず、肥満もしておらず、コレステロールや中性脂肪も正常で、糖尿病もなく、遺伝的にも問題のない人なら、少々血圧が高めでも目くじらを立てる必要はありません。

40数年前の基準、すなわち収縮期血圧が160未満でまず問題ないことになります。