医師でも判断に困る「検査項目」

さらに新手の“脅し文句”も登場しています。先日、私が勤務する健診センターに、「『ロックス・インデックス』で心筋梗塞のリスクが最高と出たのですが、大丈夫でしょうか」と、心配する女性が来ました。

久坂部羊『寿命が尽きる2年前』(幻冬舎新書)
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「ロックス・インデックス」は、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが、活性酸素によって“超悪玉コレステロール”(こんな名称、今まで聞いたことがありません)になり、それを血管の内膜に取り込ませる「LOX-1」というタンパクを測定して、将来のリスクを予測するというものです。

その女性は40代で、やせていて、低血圧で、コレステロール値も高くない非喫煙者で、親類縁者に心筋梗塞や脳梗塞の人はいませんでした。これまでの概念では、動脈硬化の危険因子がほとんどないので、私はどう答えていいのか迷いました。

危険因子の多い人が、このインデックスが高いのなら、「すぐ生活習慣の改善を」と言いますが、この女性の場合は、「大丈夫です」とも言いにくいし、目新しい検査を鵜呑みにすることにも抵抗がありました。なおかつ、危険因子がほとんどない状態で、何をどうすればいいのかもわかりません。

この新手の検査は、症状も危険因子もない人に、不安を与えるだけではないかという思いが、頭をよぎりました。

ほかにも腹部の超音波検査で、「肝嚢胞」とか「肝血管腫」、「腎嚢胞」とか「腎石灰化」、あるいは「胆のうポリープ」など、検査をするから見つかるだけで、症状も治療の必要もほとんどないものを見つけて、3カ月後に再検査をなどと言うのは、徒に受診者を不安に陥れるだけでしょう。罪作りだなと思います。

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