「血圧130を超えたら」で不安になる必要はない
テレビを見ていて、いつも気になるのが、「血圧130を超えたら、血圧高めです」というCMです。日本高血圧学会の分類では、「高値血圧」に入るので、「血圧高めです」はまちがってはいません。
しかし、以前の分類には「常に」という文言が入っていたのです(いつの間にか消えましたが)。それを言わずに、「130を超えたら」と言われると、一回でも超えたら、何かしなければならないような気にならないでしょうか。
CMは自社製品を売るためのものですから、少しでも売れやすいように作るのは当然です。視聴者を騙してはいけませんが、視聴者が勝手に誤解するのはOKなのでしょう。心配を好む文化だからこそ、より安全にという判断が許容されるのです。
健康診断が生む無用の心配
健康診断は安心のために行うものですが、逆に無用の心配もたくさん作り出しています。
たとえばある女性は、血液検査で腎臓の機能を示す「クレアチニン」の値が、0.85mg/dlで、再検査に来ました。健診センターで採用している基準値が0.84mg/dl以下だったからです。
健診の結果報告に、「3カ月後に再検査を受けてください」と書いてあったので、致し方ないと思いますが、たった0.01高いだけで心配する必要があるでしょうか。
もちろん、前回の異常値が、腎臓悪化のはじまりの徴候である可能性はあります。だったら、0.84の人は放置して大丈夫なのでしょうか。そう考えると、基準値内でも余裕のある数値が望ましいとなって、心配が増えるばかりです。
クレアチニンの基準値は、施設によって一定ではなく、男性1.00以下、女性0.70以下のところもあれば、男性1.2以下、女性1.0以下のところなどさまざまです。だから、基準値を高めに取っているところで検査をすれば、この女性は心配しなくてすんだことになります。
しかし、医療業界は受診者を増やしたいというバイアスがかかっているので、どうしても厳しい基準値を採用しがちです。