東京都「時代の変化に対応できる柔軟性のある施設に」

2006(平成18)年度からは指定管理者制度が導入され、日比谷花壇グループが管理、運営を任されていた。日比谷花壇は、生花のアレンジメントや装飾などを手掛ける事業を展開しており葬式との親和性が高い。

日比谷花壇グループが指定管理者になってから、洗浄式トイレに替え、会場の椅子も可動式にし、例えば、立食形式で故人を送る、といった演出も可能になった。

利用料金は8時間69万円(その後、税率改定によって金額再設定、別途料金設定あり)にまで下げ、一般利用客にも門戸を広げた。100人程度の葬式にも対応できるように式場を間仕切りできるようにしたり、遺族室も快適に過ごせるようにリフォームしたりした。また、利用者の意向を基にして待合室の設置を都に提案し、実現に結びつけた。それこそ、一般的な民間斎場を上回るサービスを提供し始めた。

撮影=鵜飼秀徳
和の雰囲気を醸す中庭の回廊。待合室は懇親会場としても利用可能だった

かつて青山葬儀所は、条例によって葬送以外の利用は認められていなかったが、それも徐々に緩和されてきた。2009(平成21)年からは、葬式以外にも年忌法要等の利用が許可された。2010(平成22)年にはテレビ演出家のテリー伊藤が生前葬を執り行って話題になった。2016(平成28)年には目的外使用として、東北大学が主催するシンポジウム会場としても使用されるなど、新しい試みが始まりつつあった。

こうした経営努力の結果、利用数は増加基調にあった。この10年ほどは年間70〜80件ほどにまで回復。しかし、コロナ禍の2020(令和2)年度は18件と厳しい運用状況となっていた。

図表=日比谷花壇提供 ※令和2年度はコロナ禍にあり、利用数の激減などがみられる

そこで東京都では「時代の変化にも対応できる柔軟性のある施設」などをコンセプトにして、全面建て替えを計画。現在は設計段階という。新葬儀所は平屋建てで延床面積およそ2500平方メートルと、旧葬儀所とほぼ同規模としている。

従前通り、著名人の大規模葬に対応した格調高い施設を踏襲する見通し。東京都では「大規模なお別れの会から家族葬まで、葬儀の規模にあわせた柔軟な利用を考えている。回忌法要や生前葬も対応できるようにする」としている。聞くところによれば、現状ではあまり大きな変化はみられず、旧葬儀所を踏襲する見通し。

青山葬儀所は葬送をリードする存在だけに、アッと言わせるような施設にしてもらいたいと思うと同時に、個人的には現代の「小さな葬送」ブームには乗りすぎないでもらいたいと思う。