感情や思考を司る前頭葉が老化すると…

大脳は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の四つの部分からなっていて、研究によって、それぞれの機能がかなりの精度で明らかになってきている。

側頭葉は言語機能や形態の認知、後頭葉は視覚情報の処理、頭頂葉は空間認識、数字の操作などをつかさどっている。

それに対し、前頭葉は人間の知的機能の中枢で、感情、自発性、意欲、理性、創造性など、人間のもっとも人間的側面に関与している。その機能は、意欲や感情のコントロール能力、思考の切り換え能力、創造力の源泉の三つに大別される。

大脳はまだ母親の胎内にいるころから側頭葉、頭頂葉が発達をはじめ、最後に前頭葉がふくらんでくる。しかも、前頭葉は知識社会に重要な部位であることから、脳の中でももっとも遅く成熟し、そして、もっとも早く老化する。

前頭葉が老化すれば、当然、自発性、意欲、創造力、判断力などが低下し、抑制がはずれて性格が先鋭化する。さらには、知的活動に支障をきたし、感情のコントロールが困難になる。前述の感情のコントロールの悪さはこの影響も大きいのだ。

少なくとも脳の機能だけで考えれば、年をとるごとに脳の前頭葉が縮んでくるため、感情の抑制がききにくくなったり、自発性の低下や、ものごとを深く考えなくなったりしがちである。

脳の萎縮といっても、脳全体が均等に萎縮するわけではない。私はかつて老人医療の現場で、高齢者の脳の画像を大量に観察してきた経験がある。その結果、前頭葉がもっとも早く萎縮することがわかってきた。

高齢になれば、体力、知力が衰えるのはわかるが、医学的にみると、感情のほうが先に衰えるのである。つまり、前頭葉の萎縮によって感情が衰えるから、老け込んでしまうのである。

早ければ、老化は40代からはじまる。これが人間の摂理なのだ。

脳の老化が進む人は「いつも不機嫌」そうに映る

なにが不満なのかわからないのに、いつも仏頂面をしていて、なにごとにつけ、不満を口にしたり、突っかかってきたりする。いつもイラついていて、周囲と打ち解けようともしない。

自分のなかに、そういうところはないだろうか。

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会社で部下のちょっとしたミスも許せなくなり、ガミガミと怒鳴りつけ、そのことによって、自分の権威を守ろうとするところもある。また、自分に自信がないと、それを隠そうとして、不機嫌そうに振る舞うこともある。ある種の自己防衛だ。

また、若い部下からなにかを聞かれても、「そんなことも知らないのか」とか、「自分で考えろ」といった態度をとったり、いかにもめんどうくさそうに突き放したりする。

こういう人と積極的に友だちになりたいと思う人は、あまりいないだろう。その結果、孤独感にさいなまれるようになると、ますます意固地になる。とくに、会社を定年でやめたあとに、そうした状態がひどくなることが多い。

感情の衰えから、表情がとぼしくなり、まわりの人にはそれが不機嫌そうに見えることもある。実際、表情豊かな人は、あまり不機嫌になったりはしない。

感情のコントロールがうまくできなくなり、いろいろな場面に応じた表情がとれなくなる。それが周囲にどのように映っているかを、推し量ることもできにくくなる。

こうしたことも、前頭葉の老化と無関係ではない。