お客様のニーズを本人よりも詳しく知っている

また、開発前にお客様のニーズがどこにあるのかを徹底的に突き詰めていくため、彼らは、お客様のニーズについて、お客様よりも詳しく知っています。

なぜお客様よりもお客様のニーズに詳しくなれるのか? それは、彼らは顧客の工場(海外も含む)で働く現場のスタッフが実際に困っていることを、貪欲に見つけに行くからです。ただし、それだけでは今のように大きな企業になることはできません。

彼らはお客様のニーズを捉えたら、商品企画に入る前に、社会全体の潮流や業界全体のトレンドを視野に入れ、現在自社が持っている技術的な強みを活かして、どんな商品を作れるのかという分析をし、さらに、同じような商品を作っている競合他社の調査・分析をします。

それらの綿密な分析を交えながら、それまでに掴んだお客様のニーズをベースに、「こういう商品を作ったらいいのでは」と仮説を立てて商品企画を行うのです。

ですが、この時点ではまだ、プロダクトアウトの域を脱していません。

キーエンスが日本有数のマーケットイン型企業と言われる理由は、仮説を立てた後、商品開発する前に「その仮説が本当に合っているかを、さらに検証する」点にあります。

つまり、「こんなものを作ったとしたら、買っていただけますか?」「御社のこの問題を解決するために役に立つと思うんですが、いかがでしょうか?」と、自分たちが作ろうとしているものが、本当にお客様にとって役に立つのか、お客様が困っていることを解決できるのかを、あらためてお客様に直接聞きに行くのです。

キーエンスでは、このように自分たちの仮説が間違っていないことを確認したうえで、ようやく本格的に商品開発に入っていきます。これが、マーケットイン型企業キーエンスの考え方、やり方であり、他企業がなかなか真似できない点なのです。

「市場原理」と「経済原則」とは何か

次は、②「高付加価値状態での商品の標準化」についてです。

キーエンスにおける「高付加価値状態での商品の標準化」について言及する前に、理解しておいてほしい大切な考え方があります。

それは、「市場原理、経済原則で考えることが大切である」という考え方です。

これもキーエンスの経営理念の主軸として位置づけられている重要な考え方の一つです。

「市場原理で考える」とは、「市場=お客様が何を買い、何をどう使って、いつ、どんなときに価値を感じるのか? その原理はどのようなことか? をしっかりと考えましょう」という意味です。

そして、「経済原則で考える」とは、「どうすると一番利益が出るのか? で、意思決定しましょう」という意味です。