日本の水が軟水である地形的理由

一方で日本は島国かつ山国である。したがって川や伏流水は土中の成分を溶かし込む暇がない。例えば、軟水の地・京都盆地の地下には、岩盤層が造る盆地状の構造があり、その中に堆積した新しい地層が帯水層となって地下水盆(地下湖)が形成されている。なんと、その貯水量は琵琶湖に匹敵するそうだ。

巽好幸『「美食地質学」入門』(光文社新書)

ここで重要なのは、このような京都の地下水の滞留時間がわずか数年ということだ。おまけに京都盆地の地下の地層には全くといっていいほどカルシウムやマグネシウムは含まれていない。

京都のみならず、日本の地盤の多くは花崗岩やそれに由来する砂や泥、それに火山性の岩石からなる。急峻きゅうしゅんな地形で水の流れが速い上にこのような地盤だから、日本列島の水は必然的に軟水となるのだ。

日本の水が総じて軟水で、そのために昆布出汁の旨味が引き出されることは、多くの料理人さんたちはご存じであろう。その原因は、日本列島には石灰質の地盤が少なく、そして何より山国で急峻な地形が多い島国であるために、流れ下る水にカルシウムやマグネシウムが溶け込む暇がなかったのである。

関連記事
いまの天守閣に歴史的価値はない…城めぐりを楽しむ人たちに伝えたい「本当の大坂城」の姿
「世界一の技術が日本にある」太陽光や洋上風力より期待が大きい"あるエネルギー源"
自治会は崩壊、排水溝は埋没…50区画に5世帯だけの「千葉県の限界分譲地」に私が住み続けている理由
女性キャスターに「ダンゴムシ」と呼ばれても…ウェザーニューズのおじさん予報士が持つ強烈な"気象愛"
学校が「勉強のできない子」を生み出していた…インドの天才エンジニアが「落ちこぼれのための学校」を作った理由