結局国防費は増やさず、新設予定の装備も減らし…

そこで、計画を再度練り直した結果、輸送用装甲車フックスの購入は取りやめ。海軍の「フリゲート126」は、すでに注文してあった4艦に2艦追加するはずだったが、それも取りやめ。しかも、注文済みの4艦は来年に建造が始まるが、その費用56億ユーロは「特別財産」には付け替えられず、通常の国防費から出すという。ただ前述のように、来年の国防費は今年よりも減っているし、再来年も増やさないと財務相。

また、当初の計画では、高速護衛艦K130を10隻購入するはずだったが、それがおそらく6隻に縮小される。また、潜水艦発射式の対艦ミサイル「アイダス」は、製造資金が足りないので、当面、引き続き開発だけに投資。さらに米国から購入する対潜哨戒機P-8(ポセイドン)は、12機の予定が8機になった。ただ、うち5機はすでに発注されているが、残りの3機はお財布を見ながらということになるという。こうしてみると、一番犠牲になったのが間違いなく海軍である。

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ロシア、中国に続いて米国にも依存するのか?

政府、および国防省に対する批判は、実は他のところからも来ている。ドイツの宇宙・航空関連の企業連合会であるBDLIによれば、購入が決まったステルス戦闘機F-35(ロッキード社製)と大型輸送ヘリCH-47Fには、160億ユーロという莫大ばくだいな税金が注ぎ込まれるが、そのメンテナンスはすべて米国に委ねるという。

整備や維持補修をドイツ国内で行えば、何十年にもわたって確かな収入が保証されるし、最新武器に関する技術の共有、および向上など安全保障上の利点が大きい。将来の研究開発への参入もあり得る。

しかし今のままでは、購入後の整備は米軍基地、あるいはロッキードやボーイングの工場に委託されることになり、しかも、ドイツ以外の国となる可能性が高い。しかも、それによって当然、ドイツの安全保障の米国依存は高まり、それは、エネルギーのロシア依存、経済の中国依存と同じく、非常に危険なことだとBDLI。

ちなみにスイスの場合は、同じくF-35を発注しているが、ちゃんと自国にも利益が落ちるような契約内容になっているという。ところが独国防省は、米国側にその打診さえしなかったというから、BDLIは怒り心頭である。しかも、これまでは戦闘機の購入の際、さまざまな特注がなされ、ドイツ仕様となったが、今回はほぼスタンダード装備のままだそうだ。