戦争反対を長年叫んでいた彼らに交渉ができるのか

なぜこんなことになったのか? 以下は私の憶測だが、現ドイツ政府は、武器についての交渉に暗いのではないか。1998年から2005年までのシュレーダー政権(SPD)の7年間を除いては、1982年から2021年までの長きに亘り、国防省のポストはCDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)の独壇場だった。SPDや緑の党は前述の通り、その間ずっと戦争反対を叫んでいたのだ。国防に関するパイプは、国内でも国外でもあまり太くはないだろう。

それに、特注の仕様の決定や、メンテナンスへのドイツ企業の参入となれば、その交渉にBDLIが出てきて采配をすることになる。専門知識で遅れをとる政府の国防委員らが、それを嫌ったという可能性もある。

さらに考えられるのは、メンテナンスを米国に委ねると、武器自体の価格は安くなるという事実だ。メンテナンスを委託されれば、米国はその後、20年、30年、あるいはもっと長く収入が見込めるので、その分、武器自体の価格を安くする。つまり、金欠のドイツ政府は、当面の出費を少しでも減らすため、安いヴァージョンを選んだのかもしれない。

日本の政治家はこの危うさをわかっているのか

いずれにせよ、財務省は均衡財政という公約にこだわっており、連邦軍の装備の画期的な改善は見込めない。ショルツ首相やランブレヒト国防相が言う「国防費2%」は、当分、目標値のままかもしれない。実際、これまでの状況を維持するだけで精一杯という声もある。

新しく購入した2隻のタンカーの支払いはお金が足りず、軍病院の売り上げを回すという信じがたい報道もあった。CDUの議員は、「武器の費用捻出のために手術を増やせというのか」と皮肉っていたが、私が思うに、これまで国防に携わっていたCDUもこの惨状に関しては決して無実ではない。

以上、混乱したドイツの国防事情を書いたが、日本は、ドイツが何をしようが、しまいが、絶対に覚醒しなければならない。日本を取り巻く安全保障環境は、現在、北朝鮮から飛んでくるミサイルや、尖閣諸島や対馬がやりたい放題されてしまっている状況を挙げるまでもなく、戦後最悪の痛ましさだ。ドイツよりも確実に危ない。「遺憾の意」や、「厳重に抗議」でしたり顔の日本の政治家は、はたしてこの危うさをわかっているのだろうか?

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