ジャニーズが直面する「2代目経営」という難題

「国税庁の会社標本調査(2020年度)によれば、全国278万社余りのうち96.3%は『同族会社』だ。資本金100億円超の会社をとってみても、その割合は49.9%を占めている。つまり戦前から生き延びてきた一握りも、戦後次々と生まれたその他大多数も、日本企業のほとんどは創業一族による経営が続いており、企業が成長するとともにその割合は減っていくものの、大企業でも依然ほぼ半数は一族経営なのである。そしてその多くは今後も世襲を当然視していくと考えてよいだろう」(高橋篤史『亀裂 創業家の悲劇』(講談社)より)

そのためにさまざまな悲劇が生まれる。創業者の高齢化が進むが、後継者がいない。また、創業家一族が経営権をめぐって繰り広げる「骨肉の争い」などの“争族”が起こる。後を継いだ2代目が無能なため社業を傾かせてしまい、高齢を押して創業者が再び社長に復帰するなどである。

まして、タレント、それも多くの大衆の心をつかむタレントを見出すのは、砂浜に落ちたピンを探すのに等しい。それが次々にできたジャニー喜多川氏は、好き嫌いは別にして、稀有な才能を持った異能の人だった。

「芸能プロダクションなんて一代限り」

メリー氏はそのことを百も承知だったはずだが、娘かわいさのあまり、有能な人材を切り捨ててしまった。それは優れた経営者であった彼女の唯一のミスであり、最大のあやまちではなかったか。

芸能界の“ドン”といわれているプロダクションの社長が、昔、私にこういったことがあった。

「芸能プロダクションなんて一代限り。自分の子どもに譲ろうなんて考えたことはない。うまくいくわけないのが分かっているから」

メリー氏も心の中では、ジャニー喜多川氏も自分もいなくなった後のジャニーズ事務所を娘に託すのは心もとないと考えていたに違いない。だが娘のほかに信頼できる人間はいなかったのであろう。

偉大な叔父と母を失ったジュリー社長の寄る辺ない気持ちは察するに余りある。

彼女が社長に就任してからは、タレントのデビューまでは滝沢、デビュー後はジュリー社長と管轄を棲み分けしていたそうだ。

だが、生前、ジャニー喜多川氏でさえ、売れないのではないかと危惧していたSnow Manを、滝沢は成功させた。そのことで状況が一変したという。