ジャニーズが直面する「2代目経営」という難題
そのためにさまざまな悲劇が生まれる。創業者の高齢化が進むが、後継者がいない。また、創業家一族が経営権をめぐって繰り広げる「骨肉の争い」などの“争族”が起こる。後を継いだ2代目が無能なため社業を傾かせてしまい、高齢を押して創業者が再び社長に復帰するなどである。
まして、タレント、それも多くの大衆の心をつかむタレントを見出すのは、砂浜に落ちたピンを探すのに等しい。それが次々にできたジャニー喜多川氏は、好き嫌いは別にして、稀有な才能を持った異能の人だった。
「芸能プロダクションなんて一代限り」
メリー氏はそのことを百も承知だったはずだが、娘かわいさのあまり、有能な人材を切り捨ててしまった。それは優れた経営者であった彼女の唯一のミスであり、最大の過ちではなかったか。
芸能界の“ドン”といわれているプロダクションの社長が、昔、私にこういったことがあった。
「芸能プロダクションなんて一代限り。自分の子どもに譲ろうなんて考えたことはない。うまくいくわけないのが分かっているから」
メリー氏も心の中では、ジャニー喜多川氏も自分もいなくなった後のジャニーズ事務所を娘に託すのは心もとないと考えていたに違いない。だが娘のほかに信頼できる人間はいなかったのであろう。
偉大な叔父と母を失ったジュリー社長の寄る辺ない気持ちは察するに余りある。
彼女が社長に就任してからは、タレントのデビューまでは滝沢、デビュー後はジュリー社長と管轄を棲み分けしていたそうだ。
だが、生前、ジャニー喜多川氏でさえ、売れないのではないかと危惧していたSnow Manを、滝沢は成功させた。そのことで状況が一変したという。