世界の見え方は心のあり方で変わる

万法は心に従ってあり。

舟行けば岸うつるといい、雲※【はる】れば月走る(※は外字。「馬」偏に「夫」)
――『宗秘論』

すべての事象は、その人の心に従って変わります。舟が川を下るにつれて見える岸辺の景色が変わるように。歩くのに合わせて、雲の晴れ間から見える月が一緒に進んでいくように。

名取芳彦監修『ぶれない心をつくる ポケット空海 道を照らす言葉』(河出書房新社)

つまり、私たちから見える世界は、心のあり方次第で変わるのです。それは、その人の立場や考え方によって世界の見え方が異なるということです。

たとえば、Aさんが「お金がほしい」と思っていたとしたら、会う人すべて、世の中のすべてが金儲かねもうけの対象に見えるでしょう。また、物事の判断基準は、「損か、得か」でしかないはずです。

一方、「この世から貧困や格差をなくしたい」と思っているBさんにとって、人々は皆幸せになるべき存在であり、世界は解決すべき問題にあふれているでしょう。

このように、同じ景色を前にしても、どのような眼鏡をかけるかによって、AさんとBさんではまったく違う世界を見ることになります。

徹底してすべてを受け入れたとき、知恵が生まれる

どの眼鏡をかけて世界を見るかは、自分自身の持つ価値観によって決まります。別のいい方をすると、自分の価値観を通してしか、私たちは世の中を見られません。

では、空海はどのような視線で世界を見よといったでしょうか。

彼は、「仏の教えに従え」と説いています。そして、「そうすれば、すべての物事を肯定できる」と教えています。

仏教は基本的に、起こる出来事を受け入れていく考え方をとりますが、その中でも、特に密教みつきようは「大肯定」といっていいほど、徹底してすべてを受け入れていきます。

どういうことかというと、この宇宙すべて、生きとし生けるものすべて、また、起きることすべてを肯定していくのです。当然、どんな出来事が起きても、どんな感情が生まれても否定せず、いったん受け止めます。

そうやって、あらゆる出来事を「大肯定」すると、そこから物事をよくするための知恵が生まれます。そしてこの世は、実は「素晴らしき世界」であったと気づけます。空海は、その世界を皆に見てほしいと願ったのです。

身近な物事や自然を悟りの材料にする

お釈迦様は、ご自身が出会った経験や物事をすべて、悟りの材料としました。たとえば、人の優しさや裏切り、天体の運行、四季折々の自然や生き物の姿……。あらゆるものから学び、そこに真理を見出したのです。私たちもお釈迦様と同じように、さまざまな物事や自然の姿に囲まれています。つまり私たちも、日々の出来事をすべて成長の糧にできるのです。

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