仮想通貨全体が持ち直す展開は期待できない
FTXの経営破綻は、仮想通貨に一段の調整圧力をかけると考えるべきだ。バハマや米国の当局は、顧客資産の管理についてFTXに対する捜査に着手した。
個人や機関投資家は、仮想通貨関連企業のビジネスモデルに懸念を強めるはずだ。仮想通貨を手放す投資家はさらに増えるだろう。当局の規制も強化されるだろう。特に、交換所の顧客資金の管理体制、自己資本比率の引き上げなどは喫緊の課題といえる。仮想通貨市場や関連の業界には、より強い下押し圧力が加わりやすい。
昨年11月ごろまでとは打って変わって、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の連鎖がより鮮明となる可能性が高い。FTXの経営破綻は、仮想通貨バブルの後始末が深刻化する予兆に見える。
米国を起点に景気後退が迫っている
今後の1つのシナリオとして、仮想通貨の下落や換業者の経営破綻などが増え、投資ファンドが想定外の損失を被る展開が想定される。物価の高騰を抑えるために、米国やユーロ圏などで、金融引き締めは想定された以上に長引く可能性が高い。政策金利であるFFレートの引き上げによって米国の労働市場は軟化するだろう。それに伴い、世界経済を下支えしてきた米国の個人消費にはブレーキがかかる。世界的な景気後退が現実のものになる恐れは一段と高まりやすい。
そうなると、人々はリスクテイクにより慎重になる。仮想通貨には、価値を一定に保つ仕組みがない。ビットコインなどを手放す投資家はさらに増えるだろう。FTXのように資金繰りが逼迫し、経営破綻に陥る仮想通貨関連の企業は増えるものと予想される。その結果として、投資ファンドなどの損失が膨らむ恐れが増す。多くの投資家は、より高い利得を手に入れるために自己資金に加えて金融機関から資金を借り入れてきた(レバレッジ)。