通貨下落と外貨不足に苛まれるハンガリー

ここで経済に話を転じると、ハンガリーの経済は目下、厳しい状況にある。特に通貨フォリントの下落は激しく、為替相場の年初来下落率は対ドルで20%、対ユーロで10%を超えた(図表1)。特に対ドル相場の下落は、輸入の際の契約通貨の50.4%(2020年時点、EU統計局)を米ドルが占めるハンガリーのインフレを押し上げている。

ハンガリーの最新10月時点の消費者物価の前年比上昇率は21.1%と、ユーロ圏の倍近い高水準だ。ハンガリーで20%台のインフレが起きるのは、体制転換後に経済が混乱していた1996年以来のことであり、記録的な出来事である。経済成長を重視するオルバーン首相とはいえ、この高インフレを放置することはできない。

ハンガリー国立銀行(中央銀行)は通貨フォリントの防衛のため、今年1月時点で2.9%であった政策金利を、10月末までに13.0%へと急ピッチで引き上げている(図表2)。10月14日からは、新たなフォリント防衛措置として、1日物預金入札(市中銀行が中銀にオーバーナイトで預金をすること)という制度を設けて、その際に適用される金利を政策金利よりも高い18%に設定した

一方、ハンガリーでは、外貨準備も急速に減少している。2022年初には必要最低限の目安とされる輸入の3カ月分を超えていたが、足元では3カ月分に満たない水準まで落ち込んでいる。こうした状況では介入による通貨防衛も困難であるため、ハンガリー国立銀行は利上げを続けるしかなくなっている。

国益のためにEUを利用する

EUはコロナショック後の景気回復に弾みをつけるため、EU復興基金を設置した。しかしEUは、ハンガリーに対して資金の配分を拒否している。ハンガリーがEUの重視する「法の支配」を軽視しているという理由からである。EUはハンガリーが言論の自由を制限したり、同性愛者や女性の権利を制限したりしていると問題視している。