一方、外貨不足に直面するハンガリーにとって、復興基金からの資金配分は喉から手が出るほど欲しいものだ。

そのためハンガリーは、ドルジバの件を勝ち取って以降、復興基金からの資金配分を得るべく、EUに対して融和的な姿勢に転じている。そうはいっても、ハンガリーという国の立ち位置や、オルバン首相のこれまでの政治手法を考えた場合、ハンガリーがこれを機に真の意味で親EU的にスタンスを転じることなど考えにくい。

他の中央ヨーロッパの国々と同様に、ハンガリーもまたEU加盟を国是としてきた。それこそが国益にかなうという政治判断からだが、EU加盟後のハンガリーは、そのEUからどれだけベネフィットを引き出せるか、というスタンスを強めている。そのための戦術としてロシアとの関係も引き続き重視するというのが、オルバーン首相の手法である。

国益のためにEUをどう利用するか。ハンガリーのみならず、EUに参加する全ての国がこの視点を持っている。EUの結束を重視する立場の国として、例えばフランスがあるが、それはEUが結束したほうが国益にかなうためである。とはいえ、そのフランスにもEUから譲歩を引き出すことを重視するべきだと主張する論者も少なくない。

小国の生き残り戦略として理にかなっている

EUの結束を乱していると評価されることもあるハンガリーだが、その底流には大国に挟まれた小国特有の現実主義が流れているといえるのではないか。言い換えれば、27もの主権国家を束ね、東西南北に広がるEUが完全に一体化することなどまず不可能であることを、ハンガリーという国が身をもって示しているといえよう。

小国の生き残り戦略として、ハンガリーの現実主義外交は理にかなっているのではないだろうか。日本はその立場上、欧米と協調した外交を基本とするのが当然である。そのうえで、日本は自らの国益を見据えた外交戦略を展開する必要があるのだろう。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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