プーチンと関係を維持するハンガリー首相の狙い
ウクライナに侵攻したロシアに対して経済・金融制裁を強化する欧州連合(EU)だが、その中でも独自の動きを見せる国として、ハンガリーがある。
ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相はロシアのウラジーミル・プーチン大統領と良好な関係で知られており、EUによる経済・金融制裁に対しても、慎重な態度を堅持している。
そのハンガリーは、EUが推進する化石燃料の「脱ロシア化」の取り組みに対しても、慎重な態度を貫いている。ロシア産化石燃料に対する依存度が高いことが、その最大の理由だ。EU統計局によれば、2020年時点においてハンガリーの輸入する石油の44.6%がロシア産であり、天然ガスに至っては実に95.0%にも達していた。
内陸国であるハンガリーの場合、海上輸入という手段は取り得ない。当然、バルト海や地中海からハンガリーに至る石油やガスのパイプラインなども存在しない。EUが肝いりで推進しようとする化石燃料の「脱ロシア化」だが、ハンガリーにとっては不可能だ。そこでハンガリーは、EUに対して同国への特例措置を盛り込むように要求した。
結局、ハンガリーの要求に応えるかたちで、今年6月3日にEUの閣僚理事会(加盟各国の閣僚から構成される立法・政策調整機関)がロシア産の石油の禁輸措置を中心とする対ロ制裁第6弾のパッケージを採択した際、ハンガリーおよび同様の問題を抱えるチェコとスロバキアに対して、ロシア産の石油の輸入に関する特例措置が設けられた。
この第6弾のパッケージでは、海上輸送によるロシアからの輸入は原油の場合で6カ月以内に、石油製品の場合で8カ月の猶予期間の後、禁止されることになった。しかしロシアからハンガリーに至るパイプライン「ドルジバ」によるロシアからの原油の輸入は、閣僚理事会が新たに禁止を決定しない限り、継続されることになった。