女性のイケメン志向に対応するように美容男性が激増

これまで調査結果を分析してきた出生動向基本調査(社会保障・人口問題研究所)とともに、最近、社会生活基本調査(総務省統計局)の結果も公表され、コロナ禍の影響など興味深い結果が明らかとなっている。

この調査は、国民の生活時間と生活行動について5年ごとに調べているが、私が特に注目しているのは、トイレ、入浴、身づくろい、化粧などの「身の回りの用事」の時間が増加しつつある動きである。これについては、一般には、あまり重視されていないが、私は、トイレなど本来の生理的な時間がそうのびていくはずもないから、身の回りの用事時間の長短で「おしゃれ時間」の長短が測れるのではないかと考えており、そうした観点から注目しているのである。

男女別に年代ごとの「身の回りの用事」時間を調査年次ごとにどう変化してきたかを示すグラフを図表4および5に掲げた。

女性のグラフ(図表4)を見ると、若い世代、特に20代でおしゃれ時間が長く、中年で一度短くなり、60代以降の高齢者ほど、再度、こちらはおしゃれだけでなく入浴、トイレなどの生理的な動作に時間がかかることにより、身の回りの用事時間が長くなるというのが世代構造の基本である。男性(図表5)は、女性よりおしゃれというより生理的な行動という側面が大きいため20代での突出がなく、ほぼ年齢とともに長くなる傾向が認められる。

生活が豊かになるとともに、入浴など清潔を保つための時間が延び、またおしゃれにも気を使うようになるので「身の回りの用事」の時間は年代を問わず、全般的に増加していく傾向となっている。男性の場合は、女性ほどこの傾向が顕著ではないが、入浴時間(週平均は何回入浴するかで増加する)などが同居する女性と連動することなどにより同様の増加傾向になっている。

変化の特徴として目立っているのは、女性の場合、20代の増加より中高年の増勢の方が著しい点である。美魔女という言葉から想像されるように、美容、おしゃれが若い世代だけでなく中高年へと波及してきたのである。

ここで注目したいのは、こうした一般傾向の中で、2011年の状況が示している直近の変化である。

女性の場合、2021年も基本的には上昇傾向にあるが、20代後半と30代ではこれまで最多だった2011年と比較して、むしろ、低下している。これはコロナ禍の影響でリモートワークする者の割合が特にこの年代で多かったためと考えられる。通勤が減ったのでその分、おしゃれに要する時間も減ったのである。

5年前の2016年まではあまり目立ったところがなかった男性の動きであるが、最新年については大きく変化しているのが注目される。すなわち、2021年については、コロナ禍で通勤が減っているにもかかわらず、男性の身の回りの用事時間は各年代でかなり増加となっており、女性の動きと比較しても違いが目立っている。

「美容男子」という言葉をはじめ、メンズコスメやメンズ脱毛なども浸透してきて、男性でも美容を意識する割合が上昇していると言われるが、まさにそれをデータで裏づける結果と言えよう。

上(図表3)でもふれたように、結婚相手の条件として男性だけでなく女性も「容姿」を重視するようになっているが、このことも美容男子増加の一因だろう。

20代までの男性の「身の回りの用事」の増加はこのようないわゆる「美容男子」化の影響とみられるが、さらに60代前半の高い上昇幅にも気づかざるを得ない。

この動きには、定年の延長や年金制度の変化で、この年代の就業率が上昇していることが反映していると思われる。職の保持や再就職のため若く見えるよう美容整形に走る中高年もいるときくが、そこまでしなくとも身づくろいに気を遣うようになったこの年代の状況変化がうかがわれるのである。

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