脳内にある赤と青のランプの正体

ひとは、共同体のなかでの評価を自尊心によって計測するよう進化してきた。高い評価を得る(青のランプが光る)と自尊心メーターの針が上がり、高揚感と強い幸福感をおぼえる。逆に低い評価をされる(赤のランプが光る)と、不安や絶望に打ちのめされる。

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わたしたちはつねに、(無意識のうちに)できるだけ多くの青いランプを集め、赤いランプを徹底的に避けようとしている。

痛みの特徴は、他の感覚とは異なって、即座の対処が必要なことだ。火災報知機が鳴っているときに、のんびりテレビを見ていては焼け死んでしまう。赤いランプが光ったら、なんらかの攻撃を受けているのだから、放置してすますことはできない。

いじめ問題の本質

こうした状況は「闘争か逃走か」で知られるが、近年は「Flight(逃走)、Fight(闘争)、Freeze(すくみ)」の「3F」と呼ばれるようになった。

攻撃を受けたとき、生き物はまず逃げようとし、それが無理なら反撃する。逃げることも闘うこともできない絶体絶命のときは、体温と心拍数を下げ、胃や腸内のものを排泄し、意識を失う。なぜ「死んだふり」をするかというと、一般に捕食者は死んだ動物の肉を食べないからだ。

学校のいじめにおいては、いじめられた子どもは逃げることも闘うこともできずフリーズする。だがこれは、脳にとっては大音量で警報が鳴っている状態なので、日常化するとさまざまな深刻な精神症状が現われる。

そう考えれば、いじめ問題の本質は、学校という逃げ場のない空間に同世代の子どもたちを“監禁”するという、進化の歴史ではあり得ない「異常な文化」にあるのだろう。