SNSという最悪のプラットフォーム
だがこれは、相手の反応が目に見え、人間関係を紛糾させると自分が不利になるとわかっている場合の話だ。ところがSNSでは、多くは匿名で意見の交換が行なわれ、テキストの向こうに人格を想像することは難しい。
古今東西の歴史をひもとけばわかるように、人間は匿名の陰に隠れるとかぎりなく残酷になる。戦場で想像を絶する残虐行為が行なわれるのは、軍隊が個人ではなく匿名の「兵士」の集団だからだ。
SNSは人類の進化には存在しない環境で、自分は安全な場所にいながら、相手を一方的に攻撃できるという、言論空間のプラットフォームとしては最悪の環境をつくり出した。そこでは、ささいなことで自尊心を傷つけられたと感じた者たちが罵詈雑言や誹謗中傷をぶつけ合っている。
ここまでは、人間の本性からの論理的帰結だ。悩ましいのは、だったらどうすればいいかの答えが、まだどこにもないことだ。