また、既に高校生の時には、将来は組織のトップになりたいと公言していたほど、リーダーとしての意識が高い。

「人に指図されるのが嫌なのかもしれません。仮に、チームとしてのゴールや達成すべき目標があって、自分が未熟なゆえにそれができなくて指図されるならまだいいのですが、理解できないことを押し付けられるのが苦手で。まあ、体育会なんて理不尽の塊ですけどね……」

慶應義塾大学経済学部を卒業後、2004年4月にキリンビール入社。3年間の営業経験を積んでから、崎陽軒に中途入社した。最初の1年間は現場研修で基礎を徹底的に叩き込まれた。野並社長がとりわけ印象に残っているのが、弁当工場での仕事だった。

「弁当の具材を詰めるのが遅いと、ベテラン社員の方に何度も怒られました。私のせいでよく製造ラインも止めてしまいました」

この厳しい製造現場を目の当たりにして分かったことがある。

「毎日約2万7000個のシウマイ弁当が作られていくリアルを肌で感じました。シウマイ弁当を作るのは簡単ではありません。私たちはこの仕事に誇りをもっています。現場で働く機会を得たことで、そうした思いをいっそう強くしました」

1年間の研修を終え、まずは崎陽軒が運営するレストランの店長を務めた。その後、2年間のビジネススクール通いを経て、新規事業の立ち上げ担当になった。ここで野並社長は大失敗をする。

撮影=プレジデントオンライン編集部
高校時代には既に組織のトップになることを思い描いていた。

新規事業で大失敗

「机上の知識が不要だとは思いませんが、世の中は計算式だけで成り立っているわけではないことを痛感しました」

新規事業として野並社長が手がけたのは、2013年4月にオープンしたサンドイッチ専門店「RIGHTEOUS」。本格的なサンドイッチを手軽に食べられる店をコンセプトに、鳴り物入りで飲食業界に新規参入した。ところが、月次の売り上げ目標を一度も達成できないまま、わずか2年ほどで閉店したのである。

「グルメバーガーのように、本格的な料理を提供する一方で、店舗の作りはファストフード店に近い。双方のいいとこ取りをしたいと思ったのですが、それがまったくできませんでした」

ただし、この痛恨の失敗は、野並社長にとって大きな糧になった。以後、社員のチャレンジを積極的に後押しするようになったのである。