「土地も建物もすべて差し上げます」

その後、毎月のように久比を訪れるようになった。その際には三宅に加えて久比出身の元研究者・梶岡ひでしとも会い、語り合った。梶岡はレモンの有機栽培に絡んで三宅を支援しているだけでなく、久比の再生に人生をささげているだけに、相談相手として最適だった。

そのうち旧医院を利用する構想がトントン拍子で具体化していった。というのも、梶岡人脈の中に旧医院のオーナーである梶原四郎が含まれていたからだ。梶岡は幼いころに梶原と同じ小学校に通い、クラスメートだった。

現在は広島県の本州側で総合病院を経営する梶原。梶岡の紹介で更科に会うと、「地域のためになるのであれば」と言って「介護のない社会」構想に賛同した。「亡き父も喜ぶと思います。賃貸だと手続きが面倒だから、土地も建物もすべて差し上げます。自由に使ってください」

ボランティア活動がエンターテインメントに

その後、更科、三宅、梶岡の3人は意気投合。そして2019年3月に旧医院を本部として「まめな」を設立し、それぞれが共同代表に就任した。

まめな提供
「まめな」の共同代表3人。左から更科氏、三宅氏、梶原氏

旧医院の改修や清掃、草刈りには大勢のボランティアが関わり、多くが「まめな」ファンになっていった。

例えば2020年3月、「まめな」は学育プロジェクトとして「親子で学ぶ、大地を感じる、風の草刈り体験」を実施。域外から何十人もの家族連れが旧医院に集まり、草刈りを体験した。

私も家族連れで参加した。大自然と触れ合いながら楽しそうに作業に取り組む子どもたちの姿を見て思った。知らぬ間にボランティアがエンターテインメントに変わってしまっている!

上手にボランティアを呼び込み、素晴らしい体験を提供し、関係人口を増やしていく――これが「まめな」流だ。(文中敬称略)

(第8回に続く)

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