日本は世界有数の雪大国だ。積雪量も降雪量も世界一の記録を持っている。気象予報士の森さやかさんは「冬が暖かくなると雪は増える。地球温暖化により、日本海側は今後さらに記録的な大雪にさらされる可能性がある」という――。

※本稿は、森さやか『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)の一部を再編集したものです。

北海道の冬の風景
写真=iStock.com/pangjee_9
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積雪記録世界一になっている滋賀県の山

その昔、寒さが豊かさを表わすという偏見から、「雪」が先進国の象徴とみなされる時代があった。だから海外向けの日本の紹介写真には、決まって雪景色が登場した。それは何も雪が綺麗ということだけではなく、先進国であるというアピールだったのである。今となっては、アラブ諸国やシンガポールなどの活躍で、そうした先入観は薄れてきたものの、雪が豊かさの象徴であるというのなら、日本は申し分のない裕福な国といえる。なぜなら、我が国は世界でもっとも雪深いからである。

その証拠に、世界一の積雪記録は滋賀県の伊吹山で作られている。1927年2月14日、雪の高さが11メートル82センチに達し、並み居るライバルの記録を抜いて世界一となった。その高さは4階建てのマンションや、鎌倉大仏の座高に相当するほどで、いまだにこの記録は破られていない。

また青森県の酸ヶ湯すかゆは、混浴の大浴場で有名な標高925メートルの高地だが、ここは世界でもっとも降雪量の多い場所の一つとされている。つまり、積もった雪の深さではなく、空から降ってきた雪の総量が多いのである。気象史学者のクリストファー・バート氏によれば、酸ヶ湯に降る雪の量は年平均17メートルで、世界一だそうである。それなのに積雪の最大記録は5メートル66センチと、伊吹山の半分ほどしかないのは、大雪が降る割には標高が低いために、春夏に気温が上がって雪が解けてしまうからである。