大きなメーカーがあるわけではない。出荷ならびにマーケティングを行う協同組合は、農家に厳しい品質基準を課している。この品質基準が守られているのは、地域社会による密着型ガバナンスが行われているからである。地域社会の監視が効果的なのは、手抜きを見つけるということにあるのではないだろう。周りから監視されているということを知っていると、それだけで手抜きができなくなるという効果のほうが大きいかもしれない。まさに壁に耳あり、障子に目ありである。

このような地域社会による密着型ガバナンスは日本だけの特徴ではない。フランスのワインの品質も地域によるガバナンスによって支えられている。フランスでも、ボルドーとかブルゴーニュという大きな地域の名前のついているワインよりもより小さな村名のついたワインのほうが品質が高いと信じられている。地域社会が小さければ小さいほど、監視の目はよりよく行き届き、ごまかしができないからだろう。

数年前にブルゴーニュのワイン産地を見るチャンスがあった。初夏のブドウ畑を案内されたが、あまり高い格付けをされていないドメーヌには、手入れが悪いために黄緑色に変色しているぶどうの樹がところどころにあった。これに対して最高クラスと格付けされているドメーヌにはそのような樹がまったくなかった。素人の目から見ても違いがわかる。プロの目で見れば、仕事ぶりの違いは歴然としているのだろう。

このようなことを考えているときに、林原という岡山県の会社が会社更生法の申請をするというニュースが舞い込んできた。岡山の超優良企業だと思っていただけににわかに信じられないニュースであった。新聞の報道によれば、売り上げの粉飾があったという。林原は、地域密着企業から、公的企業に脱皮する過程にあった企業である。その脱皮の過程で地域密着型のガバナンスが利かなくなったから、このような問題が起こったと見ることができるかもしれない。