看護師の変革が新薬や医療機器の開発につながる
現場での受け入れの難しさは、横浜市立大学附属病院の後藤が体験していた。
「日本の麻酔科医の頭の中には、看護師が麻酔をできるというのはなかったと思います。医師だけでなく、それ以外の職種からも大丈夫かという声があがっていた」
横浜市立大学附属病院では周麻酔期看護師を採用した初年度、周麻酔期看護師が関わるすべての麻酔に後藤が立ち会った。周麻酔期看護師の力量を自分の目で見極めるためだった。
「周麻酔期看護師はみなさんの、我々のパートナーになる人たちです。私が一年間一緒にやって肌身で分かりました。私を信用して一緒にやりましょうという説明をしました」
だからこそ、先達がいなかったとりだい病院で周藤が苦労したであろうことは手にとるように分かる。それを踏まえた上でこう続ける。
「とりだい病院も同じですが、病院の職員の半分は看護師。病院の文化は看護部が左右すると私は思っているんです。向学心に溢れて、研究心があって論文を書こうという看護師が増えれば、医師も尻を叩かれて、自己研鑽せざるをえない。病院全体がそういう雰囲気になれば、多職種で研究が進み、新薬や医療機器の開発にも繋がるはずなんです」
周藤は今年4月から、鳥取大学大学院医学研究科医学専攻博士課程に進んでいる。もちろん、周麻酔期看護師との勤務を続けながらである。
「現場に即した研究をして、それを論文にするとみんなが読むことができる。英語にすれば全世界の人に見てもらえる。それが患者さんへの恩返しになるんじゃないかって考えています」
「ほんとやりたいことがありすぎて、やる気を持て余しているんです」、と周藤は明るい声で笑った。
鳥取大学医学部附属病院 手術部 看護師 周麻酔期看護師
鳥取大学医学部保健学科看護学専攻卒業、鳥取大学医学部附属病院入職(手術部配属)。2018年3月 横浜市立大学大学院医学研究科看護学専攻博士前期(修士)課程修了(周麻酔期看護学分野)。鳥取大学において特定行為研修受講(特定行為研修1区分、6区分)。2022年4月 鳥取大学大学院医学研究科医学専攻博士課程入学。周麻酔期看護師の勤務を続けながら研究に励んでいる。